欧米でも増えるモンスター客、コールセンター従業員8割が暴言を経験 勤務前からにじむ涙
8割が暴言を経験 勤務前からにじむ涙
こうした例は枚挙にいとまがない。 AI開発のASAPP社が発表したデータによると、アメリカではコールセンター勤務者の81%が顧客から暴言を吐かれた経験をもつ。また、3人に1人は脅しを受けたことがあるという。全米でおよそ300万人がコールセンター業務に従事しているが、離職者は毎年120万人に達する。インドのビジネス・スタンダード紙など本調査を報じている。
アメリカ最大規模の医療保険会社であるシグナ社の現場も、スタッフへの問題行為が頻発する職場のひとつだ。パンデミックに伴いコロナの検査費用の払い戻しに関する問い合わせが激増し、長引く処理時間に顧客が苛立っている。
同社スタッフが匿名で英ガーディアン紙に明かしたところによると、顧客が不満を抱えている背景には同社のサポート体制の不足もあり、一概に顧客が悪であるとは断言できないようだ。
ただし、苛立つ顧客たちから暴言を受けることも多く、サポート担当者たちにとっては大きな精神的負担となっている。この担当者は問題解決の助けをしたいものの、上司から求められる対応効率と怒れる顧客の間で板挟みになっていると打ち明ける。
この担当者は同紙の取材に対し、「勤務の開始前に涙が溢れそうになる日さえ何度かありました。精神的にも肉体的にも、もう耐えられません」とこぼす。
メンタル保護の試み始まる
状況が深刻化するにつれ、オペレーターたちの精神衛生を守るべきだとする動きが出始めている。北部スコットランドの労働党議員は、前線の従業員に対する虐待を独立した犯罪として扱えるよう、政府に法案の採択を求めている。
これとは別に、独自の対策に踏み切る企業も現れた。ロイズ銀行は新たなしくみを試験導入し、オペレーターを精神的な攻撃から保護しようと図っている。同行のオペレーターが、罵声や攻撃的な言動、セクハラなどを受けた場合、顧客に警告したうえで、改善されない場合には対応を打ち切ることが認められる。通話は自動応答メッセージへと転送され、暴言を吐いた顧客は次のような音声を聞くことになる。
「建設的な会話を行うことができなかったため、通話を終了しました。お客様のお手伝いをしようと努めているスタッフに対し、脅迫あるいは虐待的な言動を行うことのないよう、前もってお願いしております。通話内容を検証し、結果によってはお客様の口座を解約する必要がありますので、その際は追って書面でお知らせします。」
口座の解約が単なるけん制に留まるか、それとも実際に行う可能性があるのかを同行は明らかにしていないが、いずれにせよ真剣に問題と向き合う意向を感じさせる内容だ。顧客だから多少の暴言は許されるという誤った風潮は、もう当たり前ではなくなっているのかもしれない。