欧米でも増えるモンスター客、コールセンター従業員8割が暴言を経験 勤務前からにじむ涙
コールセンター勤務者の81%が顧客から暴言を吐かれた経験をもつ...... Bojan89-iStock
<コロナ禍の不満により、コールセンター担当者への暴言や心的虐待が欧米でも増加。暴言に対し、口座の強制解約で毅然と対応する銀行も>
スーパーの店頭や駅の窓口などで、係員に対して怒鳴りつける残念な顧客の姿を目にすることがある。サービス提供者に対して不当な要求をする、あるいは度を超えてぞんざいな態度をとるなどの行為は、俗にカスハラ(カスタマー・ハラスメント)とも呼ばれる。
近年国内で大きな問題となっており、場合によっては威力業務妨害などの刑事事件として立件されることもあり得るが、抑止力として十分に働いていないのが現状だ。
「お客さまは神様」と説いたのは演歌歌手の三波春夫だったが、これは神前のように清い心で舞台に立つべしとの戒めを込めたことばだ。これを誤って援用し、顧客は事業者よりも立場が上であるとする主張も目立つ。
こうした一部消費者による迷惑行為は、日本固有の現象というわけではないようだ。とくにコロナ禍において顧客側のストレスが蓄積し、その矛先が窓口担当者などへ向かうケースが欧米でも増えはじめた。被害が目立つ職種のひとつが、コールセンターに勤める電話オペレーターだ。
止まらない個人攻撃 「遺書に名前書く」の脅しも
イギリスではネット銀行のファースト・ダイレクト社のCEOが自ら、同行コールセンター従業員への嫌がらせが増えているとし、公開レターを通じて顧客に理解を求めた。クリスマスを前に被害が拡大しており、スタッフへのネットストーカー行為や罵倒などが相次いでいるという。
同社のクリス・ピットCEOは英BBCに対し、顧客は「たいていの場合において親切です」と述べる。一方で、窓口担当者への個人攻撃に走るケースが断続的に発生しているという。
ある顧客は電話オペレーターのフェイスブック・アカウントを探し出し、容姿も以前の職場も知っているといって脅しをかけたという。別の顧客はセキュリティ認証に失敗したことに立腹し、150回以上もコールセンターに電話をかけ、対応した一人ひとりを罵倒していった。
英デイリー・メール紙は、ロンドンに本店を置くロイズ銀行での例を取り上げている。思い通りの対応が受けられないと知った顧客のなかには、SNSに担当者名を書き込む、あるいは裁判で訴えるなどと脅す者が絶えないという。自殺を仄めかし、遺書に名前を書き遺すと述べた顧客もあった。同行のあるコールセンター担当者は、「心理的虐待」を受けていると嘆く。