欧米の偽善、国連会議で振りかざす「緑の植民地主義」を糾弾する
Colonialism in Green
ノルウェーは先進国中で最も化石燃料への依存度が高い国だ。原油と天然ガスが輸出の41%、GDPの14%、政府歳入の14%、雇用の6~7%を占めている。天然ガスの埋蔵量は欧州最大級で、世界第3位の輸出国でもある。
そんな国が、アフリカ諸国にこう宣告している。私たちは豊かな暮らしを手放さないが、諸君には開発を諦めてもらう。その代わり二酸化炭素を排出しないなら、ささやかながら支援はしよう、と。
弱者がさらに弱い立場に
こうした偽善は他の国も同じだ。アメリカ政府は温暖化対策で高い目標を掲げてみせたが、産油国に対しては増産を求め、アメリカ人の需要を満たそうとしている。
ドイツ政府もそうだ。野心的な排出削減目標を掲げる一方で、国内産業の脱石炭には20年近い猶予を与えている。
気候変動対策の名の下で、貧しい国々は開発を制限されようとしている。
だが開発を進めなければ、世界の貧困国は異常気象による水害や干ばつなど、気候変動の深刻な影響に対する抵抗力を高められない。エアコンもかんがい施設もなしでは、気候変動の脅威に対抗できない。
サハラ以南のアフリカ48カ国には10億人以上が暮らしているが、その温室効果ガス排出量は世界全体の累積排出量の1%に満たない。仮にこれら諸国が天然ガスだけで発電量を3倍に増やしたとしても、世界全体の排出量は1%程度しか増えない。
一方、アフリカの10億人が使う電力の増産を妨げるならば、彼らは貧しいままで、温暖化の影響に対して弱い立場に追い込まれる。現在の温暖化を招いた責任は、圧倒的に先進諸国にあるのだが。
先進諸国は口をそろえて、公平で持続可能な開発の実現に努力すると約束している。そうであれば、先進諸国は貧しい国々の開発を支援し、クリーンな技術とインフラに大胆に投資する必要がある。
貧しい国が貧困から脱することができるように、少なくとも今後20年間は、天然ガス事業への資金提供を続けるべきだ。
排出削減を語るのはいいが、社会正義を見失ってはいけない。南の貧困国が生活水準を高め、災害への抵抗力を高めるためにエネルギー資源を使うこと。それが実現できなければ、どんな高邁な理想もむなしい。
ノルウェーを含む先進諸国は排出削減の目標について、国内では厳しい措置を取らなくとも達成可能としている。国内では痛みを伴う改革を避けて政権を守り、脱化石燃料の痛みは途上国に押し付けようという算段だ。産油国のアメリカもそうだ。
この地球上で最も貧しい人々を犠牲にして温暖化対策の優等生を気取るのは、偽善を通り越して人倫に反し、あまりに不公平である。そんな「緑の植民地主義」は許されない。