欧米の偽善、国連会議で振りかざす「緑の植民地主義」を糾弾する
Colonialism in Green
インドや中国では調理用のガスボンベが普及し、多くの人命が救われてきた。だから国連のSDGs(持続可能な開発目標)でも、天然ガスはクリーンなエネルギー源として認知されている。
そんなことは、もちろんノルウェーも承知している。天候に左右される風力や太陽光だけでは必要なエネルギーを確保できないから、現時点では化石燃料も使わざるを得ないと認識している。
だからこそノルウェーは、国産の石油や天然ガスの使用を制限しない。
同国のヨーナス・ガール・ストーレ首相はCOP26を前に、再生可能エネルギーへの移行過程では石油・天然ガスが極めて重要な役割を果たすと論じている。つまり、自分の国には天然ガスが必要だが、貧しい途上国が天然ガスに手を出すことは許さないという理屈だ。
これを植民地主義と呼ばずして何と言おう。環境保護の顔をした「緑の植民地主義」だ。
いや、ノルウェーだけではない。国の発展には膨大なエネルギーの持続的供給が必要なのに、北の豊かな諸国は南の貧しい国々に対し、「発展は諦めろ、貧しいままでいろ」と告げている。
その代わり気候変動対策の資金は援助するというのだが、それだと南の途上国はいつまでも北の先進国に依存することになる。
このやり方では「アフリカが貧困から脱却する道が阻まれる」。ウガンダのヨウェリ・ムセベニ大統領はそう批判している。
アフリカには、1日2ドルに満たない収入で暮らす人が4億人もいる。この人たちに必要な電力の全てを再生可能エネルギー(再エネ)だけで賄うことは、今の技術ではできない。値段も、アフリカの国々にとっては高すぎる。
潤沢な補助金を出せるのは豊かな先進国の政府だけだ。ちなみに産業革命の時代から今日までに排出された二酸化炭素の大半は、これら先進国が吐き出したものだ。
現時点で、再エネだけで電力のほとんどを賄っているのはほぼアイスランドだけ。他の国は今も化石燃料で発電をしている。肥料やセメント、鉄鋼の生産にも化石燃料は不可欠で、安くて低炭素な代替原料はまだ存在しない。
だからアフリカ大陸の発展には化石燃料が必要だ。電力源としてはもちろん、農業を近代化して自給自足状態を脱し、農村の若者が未来に希望を持てるようにするには石油と天然ガスがいる。
収穫量を増やすのに使う化学肥料の生産には天然ガスが欠かせない。道路や建物の建設にはセメントや鉄鋼が不可欠だ。食品や医薬品の冷凍保存にもトラックを動かすにも石油と液化天然ガスが必要だ。
こうした途上国の現実を直視しないのは人道に反し、共感を欠き、人倫にもとる。