今回の総裁選からは、自民党が古い派閥政治と決別する希望が見える
The LDP Restoration
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衆院選を間近に控えての総裁選は「党の顔」選びの側面が大きくなっている Kimimasa MayamaーPoolーREUTERS
<派閥ボスの談合で物事が決まる密室支配と、続く不祥事に国民も自民若手もうんざり。自民党は改革政党に生まれ変われるか>
この夏日本では、新型コロナウイルスの感染拡大、さらには東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えて、世論の不満が募る一方だった。国民の不満は各種世論調査や地方選挙の結果にはっきりと表れ、菅義偉首相率いる現政権の支持率は急落した。
だが、多くの人にとって予想外だったのは与党・自民党内で不満が噴出したことだ。菅も二階俊博幹事長も、不満が沸点に達していることに気付かなかった。
菅の任期満了に伴い自民党の次期総裁を決める選挙が告示された今、党内の不満と対立はさらに顕著になっている。安倍晋三前首相が所属する最大派閥の細田派は支持候補を一本化できず、安倍政権で外相を務めた岸田文雄と安倍のイデオロギーを受け継ぐ高市早苗前総務相の両方を推すことにした。
前回の総裁選に出馬した石破茂元幹事長と若手のリーダー的存在の小泉進次郎環境相は今回、河野太郎行革担当相を支持すると表明している。現政権でコロナワクチンの接種推進の旗振り役を務める河野は、世論調査で他候補を圧倒的にリードしている。
コメンテーターがこの3人の三つどもえの戦いを語りだした矢先、4人目の候補が名乗りを上げた。ジェンダーと家族政策で党を引っ張ってきた野田聖子幹事長代行だ。
4人の候補は4回の討論会を通じて、それぞれ独自の日本の未来像を描き、われこそは自民党総裁、ひいては日本の首相にふさわしいビジョンの持ち主であると党員にアピールすることになる。
くすぶる五輪強行への怒り
一方、実施時期が注視されていた衆院選は11月初めに行われる見通しだ。国政選挙が控えていることが総裁選をめぐる党内の緊張感の底流にある。菅首相の支持率急落が物語るのは、後手後手に回ったコロナ対策への不満や、1年延期されたオリンピックとパラリンピックの強行に対する怒りが有権者の間に広くくすぶっていることだ。
とはいえ総裁選を左右するのはコロナと五輪だけではない。次期衆院選はポスト安倍の初めての国政選挙で、自民党の苦戦が予想されている。安倍は政権復帰した2012年以降、衆参それぞれ3回、計6回の国政選挙で勝利し、公明党と共に衆参両院で過半数議席を維持。8年近い在任中、国会対策に手を焼くことはほとんどなかった。
だが安倍政権は一連の政治的スキャンダルにたたられた。安倍自身が権力と金の不適切な使用をめぐり野党の厳しい追及を受けたが、(「桜を見る会」以外は)前首相に対する正式な捜査は行われなかった。