今回の総裁選からは、自民党が古い派閥政治と決別する希望が見える
The LDP Restoration
安倍の側近の1人は、参院選で妻を当選させるため買収行為をした罪で実刑判決を受けた。妻の辞職で今年4月に行われた参院再選挙では、保守の牙城だった選挙区で立憲民主党が中心となって擁立した候補が自民党の候補を破った。自民党の筋金入りの支持者でさえ、「政治とカネ」の問題に愛想を尽かしていることを見せつけた格好だ。
現状では自民党は衆院選で厳しい逆風を覚悟しなければならない。9月29日に行われる総裁選では「衆院選に勝てる総裁」選びが鍵になる。誰が「党の顔」になるのか。自民党のみならず、日本の行方がそこに懸かっている。
前回と違い、今回の総裁選では党員投票も実施される。党所属の国会議員の383票に加え、党員にも383票が割り当てられ、合計766票を各候補が争うことになる。1位が有効投票の過半数を獲得できなければ決選投票が行われる。地方在住の党員も地域で広く支持をつかめる「党の顔」を求めているはずだ。
自民党の国会議員の間でも、福田達夫衆院議員を旗頭に当選1~3回の若手議員たちが党改革を求めて声を上げ始めた。この「党風一新の会」という派閥横断の緩やかなグループは、新総裁の選出や党役員の選任に関して透明性を高めるよう訴えている。
具体的には、派閥の重鎮の指示に従って派閥単位で投票するのではなく、一人一人の議員の判断によって総裁選の投票行動を決めたいと主張。選挙戦では、候補者同士が政治理念や政策をめぐる議論を活発に戦わせるべきだと述べている。
現在、自民党所属の衆院議員の半分近くがこのような当選回数の少ない若手議員だ。今回の総裁選で派閥の締め付けが弱くなっている大きな要因の1つは、党改革を要求する若手議員たちの声にある。
いずれも比較的若い4人の候補
では、新しい総裁になるのはどのような人物なのか。注目すべきなのは、4人の候補者がいずれも比較的若く、次世代リーダーと呼べることだ。
年齢は最年少が58歳、最年長でも64歳。男性が2人と女性が2人だ。男性2人は外相と防衛相を務めた経験があり、女性2人は総務相などを歴任してきた。
若い世代の日本人の感覚を反映して、社会的なテーマに関する候補者たちの姿勢は、昔の自民党とは明らかに変わってきている。女性の高市は強硬な保守派で、選択的夫婦別姓制度の導入に反対しているが、もう1人の女性候補である野田はジェンダー平等推進派だ。男性の河野は、選択的夫婦別姓だけでなく、同性婚の制度化も支持している。