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比ポストドゥテルテはプロボクサー? パッキャオ出馬で最大与党の派閥抗争が浮き彫りに

2021年9月20日(月)19時45分
大塚智彦

 パッキャオ氏はプロボクサーとして6階級制覇を成し遂げたこともあるなどその知名度は国内外で高くフィリピンでは「国民的英雄」とされ、世論調査でも人気の高さ、国家指導者への期待が常に上位となっている。

加えて世論調査で次期大統領候補として常にトップを占めているドゥテルテ大統領の長女、ミンダナオ島ダバオ市のサラ・ドゥテルテ市長の大統領選への出馬に期待が高まっているが、サラ市長は父親の女性問題などが原因で必ずしも良好な親子関係ではないとされ「父が副大統領候補を辞退しない限り自分は大統領選には出馬しない」との姿勢を明らかにしている。

こうした世論調査で常にトップのサラ市長がこれまでのところ大統領選への出馬に否定的なこともパッキャオ氏が出馬を決断した背景にあるとみられている。

憲法の規定でフィリピンでは大統領は「1期6年」に限定されていることからドゥテルテ大統領は2020年5月の大統領選には禁止されていない副大統領候補として出馬する以外に政権の中枢に残る手立てはない。

戦う準備はできているとパッキャオ氏

大統領への指名を受諾したパッキャオ氏は19日、「私はリングの中でも外でもファイターであり、指導者の座に挑む戦いの準備はできている」と述べるとともに貧困対策や汚職撲滅に取り組む姿勢を明らかにし「汚職に手を染めた公務員は刑務所に入ることになるだろう」とドゥテルテ政権での汚職体質にメスをいれる姿勢を明らかにし、ドゥテルテ大統領との違いを際立たせた。

今後の大統領選をめぐる動きで国民的英雄であるパッキャオ氏は「台風の目」になると目されるが、その前に最大与党「PDPラバン」内部の激しい派閥抗争がどうなるのか、国民や対抗して正副大統領候補の擁立を急いでいる野党勢力は固唾をのんで見守ることになる。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

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