最新記事

米同時多発テロ

【9.11】20年目の「新事実」テロ実行犯の2人は愛し合っていた

DYING TOGETHER

2021年9月14日(火)08時10分
ウィリアム・アーキン(ジャーナリスト、元米陸軍情報分析官)

210921P48_911_07.jpg

国防総省の建物もハイジャック機の激突で一部を破壊された U.S. NAVY-REUTERS

しかしFBIの膨大な捜査資料のどこを探しても、そうした見方を裏付ける証拠は1つしかない。

後にアメリカン航空11便に乗り込むことになるアブドルアジズ・アルオマリとサタム・アルスカミが9月7日に、マサチューセッツ州ニュートンのモーテルに娼婦2人を呼んだという証言だ。当の娼婦たちが顔写真から2人を特定し、2人とセックスしたことを認めている。

だがアタとアルシェヒを含め、他の実行犯が同様の行為をしていたという記録は全くない。

例えばジアド・ジャラの場合だ。彼はユナイテッド航空93便を乗っ取り、連邦議会議事堂を目指していたが、乗客の英雄的な行動によって阻止され、飛行機はピッツバーグ郊外で墜落。乗員乗客44人全員が死亡した。

ジャラにはトルコ系ドイツ人の妻がいた。妻はずっとドイツにいた。

アメリカに渡ってからも、彼は何度も妻に電話しているし、5回もドイツへ飛んで妻と会っている(アメリカでのジャラは、フロリダ州でアタとアルシェヒのアパートの近所に住み、空き時間のほとんどを一緒に過ごしていた)。

そのジャラは妻に、アメリカに来てものの見方が変わったと語っていた。アメリカでは誰も他人の生き方を詮索しない、モスクに行かなくてもいいし、秘密警察や隣人に監視されることもない。

だからアタとアルシェヒも自然体で生きている。ジャラはそう言っていた。

実行犯は心中を試みた?

そして最後の決め手。テロ実行の1カ月ほど前、ベルリンにいるビナルシブとアタが電話で話した内容だ。

ドイツの諜報機関が傍受したもので、2人は明らかにテロの標的について議論していた。

当時の国防長官ドナルド・ラムズフェルドも回想録に記していることだが、2人は学生を装い、いろいろな学科の話をしていた。

学科名が暗号で、「建築」は世界貿易センター、「美術」は国防総省、「法律」は連邦議会、そして「政治」はホワイトハウス。しかしツインタワー南棟に対する言及はない。

アタとアルシェヒの関係が、そしてそれ故に標的が変更された可能性が、なぜ重要なのか?

1つには、ツインタワーの南北2棟が同時に攻撃されなければ、どちらも崩落を免れた可能性が高いからだ。

米国立標準技術研究所の調査報告は、旅客機2機の連続的な激突で飛散した大量の燃料と破片、そして猛烈な熱が2棟の崩落を招いたと結論している。もしも直撃されたのが1棟だけだったら倒壊には至らなかった可能性が高いという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米プリンストン大への政府助成金停止、反ユダヤ主義調

ワールド

イスラエルがガザ軍事作戦を大幅に拡大、広範囲制圧へ

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス

ワールド

今年のドイツ成長率予想0.2%に下方修正、回復は緩
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中