最新記事

米同時多発テロ

【9.11】20年目の「新事実」テロ実行犯の2人は愛し合っていた

DYING TOGETHER

2021年9月14日(火)08時10分
ウィリアム・アーキン(ジャーナリスト、元米陸軍情報分析官)
2001年9月11日、米同時多発テロ

2001年9月11日、ユナイテッド航空175便は世界貿易センターのツインタワー南棟に真っすぐ突っ込んだ CNN/GETTY IMAGES

<本誌の取材で明らかになった衝撃の事実。あの日、ホワイトハウスはなぜ助かったのか。実は、標的のツインタワーは1棟だけだった。両棟に激突した2機を操縦するテロリスト2人は「一緒に死にたかったのだ」――>

アメリカ本土で同時多発テロが起きた2001年9月11日から20年。あの日の出来事については緻密な捜査が積み上げられてきたが、まだ分からないことが多い。

そもそも旅客機4機をハイジャックした男たちの素顔が見えない。彼らが分担した役割は分かっている。だが、テロリストである前にどんな人間だったのかは知られていない。

ある意味、それはタブーだった。

テロリストにも人間の顔があったと信じ、動機を理解しようとすれば、どこかで彼らの行為を正当化し、許すことにつながりかねないからだ。

しかし彼らの生きざまに光を当てると、あの日に関する重大な謎の答えが見えてきた。

実を言うと、国際テロ組織アルカイダがあの日、世界貿易センター(WTC)のツインタワーに突っ込ませようと計画していたのは1機だけだった。

しかし現実には2機が、北棟と南棟に連続して突っ込んだ。結果、南棟も北棟も倒壊した。その代わりホワイトハウスは救われた。

彼らは何を考えていたのか。私はずっとそれが知りたかった。そして取材の過程で、CIAによる尋問の書き起こし原稿と被疑者たちに関する報告書を入手できた。

そこには実行計画の立案者とされ、今なおキューバにあるグアンタナモ米軍基地に収容されているハリド・シェイク・モハメドの供述もあった。

モハメドの供述書そのものを見た人はごくわずかだ。機密事項が含まれているし、拷問その他の問題もあるので、ずっと封印されてきた。

モハメドの供述は、米国内における多数のテロ計画を未然に防ぎ、危険人物を特定するのに役立った。

だが9.11テロ実行犯の人物像を解明する目的では吟味されていなかった。

210921P46_911_05.jpg

ツインタワーの崩壊で逃げ惑う人々 AP/AFLO

本来の標的は4つだった

モハメドが繰り返し述べたところによれば、アルカイダはアメリカの軍事と政治、そして金融のシンボルを標的としていた。具体的には国防総省とホワイトハウス、そして商都ニューヨークを象徴する世界貿易センターだ。

だが首領のウサマ・ビンラディンは連邦議会議事堂も標的に加えた。議会こそ宿敵イスラエルの仲間と思えたからだ。

モハメドの供述調書に、ツインタワーの両棟に2機を激突させる計画だったとの記述はない。むしろ彼は、2機の激突に驚いたと語っている。

それだけではない。

実行犯のリーダー格でアメリカン航空11便をツインタワー北棟に激突させたモハメド・アタと、ユナイテッド航空175便の操縦桿を握って南棟に突っ込んだマルワン・アルシェヒは一緒に死にたかったのだ、とも語っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノババックス、サノフィとコロナワクチンのライセンス

ビジネス

中国高級EVのジーカー、米上場初日は約35%急騰

ワールド

トランプ氏、ヘイリー氏を副大統領候補に検討との報道

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、3週連続減少=ベーカー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 5

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 8

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 9

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中