アフガン撤退、バイデンの「テロ対処能力ある」に批判が続出する理由
ISLAMIC TERRORISM AGAIN?
実際、現在進行中のタリバン側との協議でも、焦点は国外退避の問題に絞られているという。
また8月半ばの首都陥落以降、バイデン政権が隣国パキスタンとの間で、米軍基地の復活や領空通過権の交渉を始めた気配もない。
この20年間、パキスタンがひそかにタリバンを支援していたこともあって、両国関係は冷え込んだままだ。
しかしアフガニスタンに潜むテロリストの脅威を抑え込む点では、久しぶりに両国の利害が一致するかもしれない。
現在のパキスタン政府はタリバン系武装勢力による国内での攻勢を懸念しており、アメリカ側との情報共有に関心を示している。
元駐米パキスタン大使のフセイン・ハッカニも、「パキスタン側は米国の管理する基地や監視施設を認めない立場だが、両国が非難の応酬をやめれば、テロ集団の監視で協力できる余地はある」と言う。
アルカイダにもISにも以前のような勢いはないから、少なくとも今のところ、アメリカ本土や各国にあるアメリカ大使館を攻撃する能力はなさそうだ。それだけの能力を回復するには何年もかかるだろう。
問題は「アルカイダがアメリカ本土を攻撃する能力を回復する前に、アメリカが将来的なテロの脅威を見抜く能力を持てるかどうかだ。これは時間との競争だ」と言うのは、安全保障問題に強いシンクタンク、アトランティック・カウンシルのウィリアム・ウェクスラーだ。
この競争にアメリカは勝てないとの見方もある。現に今回の空港テロでは、アフガニスタンにおけるタリバン統治の脆弱さが浮き彫りになった。
米下院情報特別委員会の民主党議員ラジャ・クリシュナムルティに言わせれば、近くに米軍基地が存在せず、信頼できる情報源もない状況では、いくら最新鋭の無人偵察機を飛ばしても、従来のような精度でテロリストの動向を監視することは難しい。
「遠くから飛ばせば燃料が足りなくなるから、現地での滞空時間は限られる。しかしアルカイダのようなテロ集団の動きを見張るためには、24時間体制で空からの監視を続ける必要がある」と彼は言う。
テロ対策は攻めから守りに
バイデン政権がトルクメニスタンやウズベキスタン、タジキスタンなど、アフガニスタンと国境を接する国々と新たな基地開設の交渉を進めない限り、そのような監視体制の維持は不可能かもしれない、と戦略国際研究センターのテロ対策専門家セス・ジョーンズは指摘する。
「それが現時点の大きな問題だ」