スーパーヒーローが乗り出した「政治改革」、若者層の動きが大きなうねりに
A SUPERHERO’S NEW MISSION
左右両派の言い分を聞くということにもエバンスはこだわった。自他共に認める民主党支持者である彼にとって、この決断は楽ではなかった。「ここ数年、あちらの党の多くの人々の行動は品位を欠いていた。両党の人々に出演を呼び掛けるのはやっぱり気が進まなかった」
保守派も最初は同じ気持ちだったらしい。当初出演を依頼した保守系議員にはことごとく断られた。ハリウッドのリベラルがまた左派系メディアでわれわれをさらし者にしようとしている、というわけだ。だが出演時間を平等にすること、党派色抜きの編集とすることを伝え続け、徐々に信頼を得ていった。
ただし嘘や根拠のない主張、いわゆる陰謀論を唱えることは禁じている。つまり、共和党議員が「不正防止」を理由に投票制限の強化を主張するのはOKだが、その際に昨年の大統領選で「票が盗まれた」と言い張ることは許されない。
共同設立者のキアニは言う。「好き嫌いは別として、ここに招かれるのは選挙に勝って議会に送り出された人たちだ。だから私たちは彼らに、誰にも邪魔されずに自分の意見を述べる機会を与えている。行き過ぎた誇張がない限りはね」
実際、「ア・スターティング・ポイント」上の動画では誰もがくつろいだ雰囲気で話している。時にはすごく私的なエピソードも飛び出す。例えば民主党のチャック・シューマー上院院内総務は、自分の政治の原点は1968年の大統領選挙でユージン・マッカーシーの予備選を手伝ったことにあると告白した。
テレビ出演時などより穏やかな語り口
好戦的な態度で知られる議員が、自分のイメージを和らげようとするケースもある。例えば共和党のダン・クレンショー下院議員(テキサス州)は、今の上院は党派色が強いように見えるだろうが、実際にはみんな舞台裏で、多くの問題について超党派で協力していると語った。
自分の意見を強く主張する議員もいるが、そのトーンはテレビの報道番組に出演する時に比べれば穏やかだ。歯に衣着せない発言で知られる民主党の女性下院議員イルハン・オマル(ミネソタ州)も、トランプ前政権によるイラン核合意離脱を非難し、バイデン現政権による対応の鈍さを批判したが、さほど辛辣な口調ではなかった。
Z世代のうち、昨年の大統領選でトランプに投票したのは全体の5分の1にすぎず、約3分の2はバイデンに投票した。この差は他のどの年齢層よりも大きい。