スーパーヒーローが乗り出した「政治改革」、若者層の動きが大きなうねりに
A SUPERHERO’S NEW MISSION
だが一方で、進歩的な若い有権者は年配の有権者よりも党派的忠誠心が薄いようだ。中道右派のシンクタンクのニスカネン・センターが20年に実施した調査では、共和党支持ではないZ世代の約3分の1が、将来の選挙では共和党への投票を検討する可能性もあると回答した。
ラトガース大学のマットによれば、この世代は表向きの支持政党に関係なく、きれいごとを並べて自分たちの支持を得ようとする候補者を嫌う傾向がある。「ア・スターティング・ポイント」がZ世代の有権者に受けている理由は、どの党の議員にも自由に、編集なしで発言させている点にあるのかもしれない。「彼らは本物を求めている」と彼女は言う。
昨年ノースウェスタン大学を卒業したばかりのジェレミー・サザランド(23)は、どちらの党の主張にも関心を寄せるZ世代の典型だ。「私は根っからのリベラルで、そのスタンスを変えるつもりはない」と彼は言う。「でも自分と意見が違う人々の主張に耳を傾けるのも大事だと思っているし、彼らがなぜそう思うのかを理解したい」
党派色を出さない「ア・スターティング・ポイント」の動画は、学生たちにさまざまな社会参画プログラムを提供しているクローズアップ財団との連携を通じて、各地の高校の教材にも使われている。同じく草の根の政治活動を支援するブリッジUSAとも連携しているから、大学生の間の認知度も高まっている。
Z世代の政治参加を促すためのこうした取り組みは、彼らが既に異例なほど政治に参加している現状を考えれば、必要ないように思えるかもしれない。
だが、とCIRCLEのキエサは言う。昨年の大統領選で投票したZ世代は確かに多かったが、彼らを本格的に政治に参加させるにはもっと努力が必要だ。「若い人は、候補者陣営から支持を求める電話や手紙などの接触を受けるケースが、他の世代よりもずっと少ない」と彼女は言う。「特に共和党は、若者に支持を訴える努力が不十分だ」
学校で得られる情報はあまりに不十分
有権者登録と投票の仕組みも、Z世代を取り込む上での障害になりがちだ。「彼らの多くは大学入学や卒業に伴う引っ越しで住所が変わる」とキエサは言う。「そうなると、どこで有権者登録をするのか、どこで投票するのかという点において構造的な問題が生じる」
高校の授業ではこのような問題について、生徒たちに解決策をほとんど示していないし、大学で得られる情報はさらにいいかげんなものだとはキエサ言う。加えて、共和党の強い複数の州では投票権の行使を制限するように選挙法を修正する動きが相次いでいる。今後はこれまで以上に若者たちが投票しにくくなるのは確実だ。