最新記事

米政治

スーパーヒーローが乗り出した「政治改革」、若者層の動きが大きなうねりに

A SUPERHERO’S NEW MISSION

2021年8月19日(木)18時48分
デービッド・H・フリードマン(ジャーナリスト)
クリス・エバンスとマーク・カッセン

クリス・エバンス(左)と盟友マーク・カッセンは政治家の声を分かりやすくZ世代の若者に届けるため、新しいネットメディアを立ち上げた NINO MUNOZ FOR NEWSWEEK

<映画スターの政治サイトがZ世代の関心を引き付けている。若い世代の有権者は今後の政治の流れを変えるかもしれない>

米連邦議会の議員ともなれば、事務所には陳情・苦情の電話が山ほどかかってくる。たいていはスタッフが丁重にお引き取り願うのだが、ある男の電話は、ほぼ確実につないでもらえるらしい。

男の名はクリス・エバンス。そう、映画『アベンジャーズ』シリーズのキャプテン・アメリカ役で知られる人気俳優だ。この6月13日で40歳になったばかりだが、最近は連邦議会議事堂に通い詰め、上下両院の議員たちに話を聞き、今のような党派政治はやめてくれと懇願し、彼らの見解を2分以内で語らせ、その様子を動画で、新世代の若い人たち向けに発信している。

動画がアップされるのは、監督・俳優のマーク・カッセン、医療系起業家で慈善家のジョー・キアニとエバンスが一緒に立ち上げたアプリ&ウェブサイトの「ア・スターティング・ポイント」だ。

政治家の政策談議なんて、TikTok(ティックトック)世代の若者には縁遠いだろうが、2分以内という短さが効いたのか、予想外に健闘している。インスタグラムには14万人、ツイッターにも7万2000人を超えるフォロワーがいる。政治オンリーで、特定政党の色が付いていないことを考慮すると、かなりの人数と言える。

「政治に最も深く関与している人々から直接、簡潔な情報をもらう。しかもジャーナリストの介入なし。これがいい」とエバンスは言う。「議会にいるのがどんな人で、どんな法案に賛成・反対しているか。サイトに来れば、それが分かる」

話題のトピックについて両党議員が熱弁

そこで何を語るかは自由だ。しかしたいていは、世間を騒がせている問題の1つについて、意見を異にする民主・共和両党の議員が1人ずつ出てきて、持論を熱く語る。

例えば共和党のデーブ・ジョイス下院議員(オハイオ州)と民主党のアール・ブルーメナウアー下院議員(オレゴン州)は禁止薬物合法化の是非について議論した。民主党のケイティ・ポーター下院議員(カリフォルニア州)と共和党のダスティ・ジョンソン下院議員(サウスダコタ州)は、いわゆる議事妨害行為について激論を交わした。

「10代の頃の自分は、政治なんて遠く離れた世界のことと感じていた」とエバンスは言う。「でも当時、ケイティ・ポーターのような人の力強い声を聞く機会があったら、何かのインスピレーションを得て政治に興味を持ったかもしれない」

もう何十年も前から、政党関係者は若者の投票行動は予測不能だと考え、そんな層に時間と労力を費やすよりも、見返りの確実な高齢層を取り込むほうが得策と信じてきた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中