スーパーヒーローが乗り出した「政治改革」、若者層の動きが大きなうねりに

A SUPERHERO’S NEW MISSION

2021年8月19日(木)18時48分
デービッド・H・フリードマン(ジャーナリスト)

そんな常識に風穴を開けたのは、今の30代を中心とするミレニアル世代。彼らは若くても、それなりに政治への関心を示してきた。

この傾向を加速させているのが、まだ20代のZ世代だ。タフツ大学の市民の学習と社会参画に関する情報研究センター(CIRCLE)によると、2016年には18~29歳の有権者の投票率は44%だったが、昨年の大統領選では約55%だった。

結果として、昨年11月の選挙では若年層の投票数が全投票数の17%に達した。今後の選挙ではさらに若者の投票率が上がるかもしれないと、CIRCLEのアビー・キエサは言う。昨年も、特に18歳と19歳の投票率増加が顕著だったからだ。

エバンスらが主たるターゲットにしているのは10~25歳の若者だ。その存在が今まで無視されてきたのは、彼らが在来メディアの視界にほとんど入らないせいかもしれない。

Z世代がもたらす大変動

「Z世代はデジタルメディアの熱心な消費者だが、彼らが大事だと思うことについてダイレクトに語り掛ける候補者は皆無に近かった」と言うのは、ラトガース大学青少年政治参加センターのエリザベス・マット所長だ。「しかし議員が直接、オンラインで若者に語り掛ければ共感を得られるだろう」

いつまでもZ世代を無視することは不可能だ。彼らは単に投票に行くだけではない。請願や選挙の応援、抗議行動といった草の根レベルの活動にも身軽に参加する。その情熱と意欲は、ソーシャルメディア中心の世界観と相まって、政治の世界を変え始めている。カメラの前で気軽にしゃべる政治家の2分動画が若い有権者の心を動かすのだとすれば、それはアメリカの有権者が劇的に変わっていく前触れかもしれない。

数と投票傾向のみならず、Z世代は現代アメリカ史上最も多様な世代でもある。国勢調査によると、この世代の半数は有色人種だ。ミレニアル世代より4%、ベビーブーム世代より20%も多い。それはつまり、人種的正義は単なる抽象的な原則ではなく、自分や家族、友人にとって身近な戦いであることを意味する。

エバンスと共に「ア・スターティング・ポイント」を立ち上げたカッセンが言う。「若い世代との橋渡しをするつもりはないが、若者とのやりとりで、彼らが伝統的な情報源に興味がないことは分かった」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身も認める「大きな胸」解放にファン歓喜 哺乳瓶で際どいショットも
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 7
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中