スーパーヒーローが乗り出した「政治改革」、若者層の動きが大きなうねりに
A SUPERHERO’S NEW MISSION
先行する世代と違って、Z世代は最も多感な時期に、ひどく異常な出来事を経験してきた。学校などで銃乱射事件が起きるのは、彼らにとって日常的なことだった。無実の黒人が射殺され、警官に窒息死させられる様子をフェイスブックの動画で見た。度し難いほどに破壊的だったトランプ政権の4年間も生き抜いた。
大量の死者を出す新型コロナウイルスの大流行も経験した。極端な異常気象に見舞われ、アメリカ人の3分の1が大統領選の結果を拒否し、暴徒化した群衆が議事堂に押し寄せる現場も見た。しかもこの不景気では、経済的に自立する道が見えない。
こうした出来事に若い世代は敏感だ。ここ数年の悲惨な経験がZ世代にどう影響したかは、まだ精査が必要だろう。ただ確かなのは、彼らが指をくわえて見ているだけの世代ではないということだ。
フロリダ州の高校で18年に起きた銃乱射で17人が殺されたとき、「生徒たちはただ抗議デモを組織するだけでなく、銃規制に対する議員たちの意見を調べ上げ、若い世代の有権者登録を呼び掛けていた」とラトガース大学のマットは指摘する。Z世代でスウェーデン人の環境活動家グレタ・トゥーンベリが、15歳でも声を上げれば世界的注目を集められると証明したのもこの頃だ。
行動で政治を変えられると知った若者たち
行動すれば選挙結果を変え、政策に影響を及ぼせると知ったZ世代はますます政治に目を向けている。若年層の声を政治に反映させようと活動する団体「ジェネレーション・プログレス」のブレント・コーエンは言う。Z世代は「政治家が何を言っても満足しないし、理屈や理想で勝つだけでも満足しない。彼らが知りたいのは、どの政治家が本当の結果を出せるかだ」。
時には選挙結果さえも変え得るZ世代に、激戦州の候補たちはかつてないほど注目している、とコーエンは言う。19歳のタリア・ジョセフも、そうした影響力を行使しようと勢い込む1人だ。彼女は今秋からウィスコンシン大学に入学する予定だが、ウィスコンシン州はそうした激戦州の1つだ。
「私たちの年代は昨年、自分たちの票が持つ威力に気付いた」と彼女は言う。「ジョー・バイデンは好きだけど、完璧じゃない。支持できない政策があれば、彼にもプレッシャーを与えなくては」。グレタより1歳年上のタリアは、現政権に気候変動対策を促す運動に参加している。