中国の経済的影響力維持を指示した習近平
コロナがあったためであることは十分に考えられるので、それならトランプ政権以来の推移はどうなっているのか、他国との比較において考察してみたいと思う。
2016年から2021年上半期における対中貿易の推移
そこで税関総署における過去の統計から、以下のようなデータを拾ってみた。
表1:2016年から2021年における上半期の輸出入額
中華人民共和国海関総署のデータより筆者作成
ここでは比較対象国・地域として「アメリカ、EU、ASEAN、日本」を選んでみた。暦年データで上半期に絞ったのは、7月13日に発表されたデータが上半期だけのものなので、比較を公平にするためだ。
数字だけでは見にくいかもしれないので、輸出入総額だけをグラフにプロットしてみた。
図1:2016年から2021年の上半期における貿易額(輸出入総額)
中華人民共和国海関総署のデータより筆者作成
図1から明らかなように、トランプ政権のときの対中経済制裁によって、ようやくその効果が表れ始めたのは2019年からだ。
2020年はコロナによるダメージを受けているので、どの国も貿易額が落ちているが、2021年に入ると軒並み対中貿易が急増している。もっとも日本だけはコロナ下にあってもなお対中貿易を閉ざしておらず、2020年で激減していないのは、主要国では日本だけと言っても過言ではない。何といっても中国が最大貿易国である日本は、世界でも特異な存在である。
それにしても、あれだけ中国とのディカップリングを叫んでいるバイデン政権は、何をやっているのか。現実と言葉の間に、あまりに大きなギャップがありはしないか。
ここ20年で世界の貿易相手国は中国に移っていた
そう思って意気消沈していたところに、それ以上に大きな衝撃を与えるデータを見つけてしまった。
イギリスの「エコノミスト」という雑誌にJoe Biden is determined that China should not displace America(ジョー・バイデンは、中国はアメリカに置き換わるべきではないと決意している)という論考が掲載されており、そこに以下のような図があるのを発見したのだ。
それは2000年におけるアメリカ(青)あるいは中国(赤)を最大貿易相手国としてきた国・地域と、2020年における国・地域を世界地図で色分けして比較したもので、最後にIMF(国際通貨基金)が示した「貿易統計の方向性」を添えている。
それを「図2」に示す。
「エコノミスト」の論考より転載
図2の最後にある「% of global total」にご注目いただきたい。
2000年では「圧倒的にアメリカ」が主たる貿易相手国である国が多いのに、20年後の2020年では、「圧倒的に中国」を主たる貿易相手国とする国が増えている。
2010年で逆転していることに注目していただきたい。