J&J製コロナワクチン、期待された欧州で「脇役」になった理由とは
欧州で新型コロナウイルスワクチンの供給危機が頂点に達した今年3月、1回の接種で済む米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のワクチンが登場すると、状況を一変させる期待の星としてもてはやされた。写真はJ&Jのワクチンのイメージ。2月撮影(2021年 ロイター/Dado Ruvic)
欧州で新型コロナウイルスワクチンの供給危機が頂点に達した今年3月、1回の接種で済む米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のワクチンが登場すると、状況を一変させる期待の星としてもてはやされた。しかし、供給開始から2カ月を経た今、欧州連合(EU)では承認済みの同ワクチン4種類のうち、J&J製の利用率が最も低くなっている。
各国が採用を控える背景には、供給問題、安全性への懸念、競合ワクチンの供給状況の改善、国ごとの接種戦略など、多くの要因が働いている。
2回目の接種が必要ないという明確な利点があるにもかかわらず、EUは供給を受けたJ&J製ワクチンの約半分に当たる600万回前後しか接種に使用されていない。やはり供給と安全性の問題が採用の障害となった英アストラゼネカ製を含め、競合する3種のどれよりも低い利用率だ。
これはJ&Jにとって悪い知らせであると同時に、EUの接種計画の効率性についても疑問を生じさせる。
とりわけEUの心象を悪くしたのは、J&J製の供給の問題だ。EUは当初発注した2億回分に加え、1億回分を2度に分けて追加注文するオプションのうち、1億回分の権利放棄を既に決定。残る1億回分については6月末に権利が失効するが、まだ態度を決めていない。EU高官らによると、注文する場合でも域外の国々に寄付する可能性が高い。
高かった期待
3カ月前の状況は、今と全く違った。
欧州委員会のキリアキデス委員(保健衛生・食の安全担当)は3月11日、「接種が1回で済むワクチンは、接種スピードに変化をもたらし得る」と述べた。
EUは当時、アストラゼネカ製の供給が予定より大幅に削減されたことが主な原因となり、接種を進めるのに苦闘していた。J&J製は当初4月に到着すると予想されており、接種の進展に決定的な役割を果たすと考えられた。