G7「一帯一路」対抗策は中国に痛手か(その2)対アフリカ中国債務はわずか20%
同等になったところで、コラム「その1」で書いたような中国とアフリカの長年にわたる結びつきがあるので、「黒人」を蔑視してきた白人、特にアメリカが、「中国を追い出すほどに」受け入れられるのか否かは別問題だ。アフリカ諸国が漁夫の利を得て繫栄すれば、実は中国は得をする。中国の最終目的は、アメリカ市場から締め出された時の新たな市場を創ることにあるのだから、長期的には中国に利する結果をもたらすだろう。
なお昨年3月23日のコラム<背後に千億円の対中コロナ支援:中露首脳電話会談>に書いたように、IMFの専務理事にブルガリアのクリスタリナ・ゲオルギエバを就けるために奔走したのは習近平夫妻だ。果たしてIMFが「反中」で動けるかも疑問の一つである。
資金は誰が出すのか?
資金は誰が出すのかに関してコーンウォールでは誰もが口をつぐんだ。質問されたドイツのメルケル首相は「まだ議論する時ではない」と逃げた。
しかしコミュニケが発布された2日後の6月15日(日本時間16日)、ブルームバーグが「日本がアメリカ国債を364億ドル購入した」とすっぱ抜いた。
アメリカは日本に「3分の1」ほどは出させるつもりだろう。記事によれば購入したのは日米首脳会談が行われる前後のようだ。周到に計算されている。
投入されるのは、私たち日本人の血税である。
こんなことになったのも、日本が中国経済を巨大化させたからであることを忘れてはならない。
鄧小平を神格化し、天安門事件後も「中国を孤立させてはならない」として日本が対中経済封鎖を破って、今日の中国の繁栄をもたらし、今日の厳しい国際情勢を招いているのである。そのことを主張したのが拙著『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させて鄧小平への復讐』だ。
この現実を明確に自覚せずに中国分析をすることはできないし、日本の歩むべき道を客観的に把握することもできない。
7月1日は中国共産党建党100周年記念に当たる。
これを機に中国共産党とは何か、中国とは何か、そして日本は中国の強大化に向けて何をやってきたのかを認識してほしいと切望する。
ちなみに菅首相は17日の記者会見で「私は対中包囲網なんか作りませんから」と述べたと産経新聞が報じている。ポロリと本音が出たか...。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。
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