最新記事

中国

G7「一帯一路」対抗策は中国に痛手か(その2)対アフリカ中国債務はわずか20%

2021年6月19日(土)14時16分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

対アフリカ債務は、中国が20%しか占めてないとすれば、残り80%は中国と無関係な国あるいは組織が投資しているわけで、その上でアフリカの貧困国や発展途上国が債務漬けになっているとすれば、論理的には残り80%の方の責任の方が大きいということになるだろう。

また返済した利息の総額の17%しか中国が占めてないとすれば、中国の利息は残り80%の債権者に比べて低いことになり、中国が高い利息で債務漬けにしているという論理も成り立たなくなる。

おまけに返せないかもしれないという、返済リスクの最も高いアフリカ15ヶ国への債権者として、中国はわずか15%の割合しか持ってないので、債務漬けで対象国を潰すような状況になっているとすれば、残り85%の国あるいは組織が何やら悪いことをしていることになる。

実際の状況から言うと、実は「民間」による投資の割合が一番大きく、世界銀行の統計によれば、ここ10年間ほどで約200%増になっているという。民間の債権者は、対象国の政府官僚などと個人的関係になり、お金は対象国政府官僚のポケットに入って、対象国の開発には貢献していない。言うならば横領で、しかも民間の場合は利息が高いので、債権者も儲かる仕組みだ。だから200%も増えた。

まさに「腐敗の構図」なのだが、ジュビリーのデータによれば、この「民間」には「中国は入ってない」ので、中国はこの「腐敗の構図」の中には入らないことになる。

どうすればG7インフラ投資新構想は成功し得るのか?

もう一つ、これらのデータから見えてくるのは、「中国はわずか20%の投資で、アフリカ諸国を掌握しているということになってしまう」という事実だ。

そうだとすれば、なんとまあ、「効率が高い」ことだろう。

効率が良くなければ、アフリカ諸国が中国に付いていくわけがないので、いったい中国はどのような方法でアフリカ諸国をリードしているのかをG7首脳は研究した方がいいということにつながる(中国の方法に関しては文字数が膨大になるので、ここでは省く)。

また資金を投入するに当たり、上述したG7首脳会談コミュニケの冒頭には「IMFからの支援を増強」と書いてある。

図2、図3によればIMFは4%しか占めていないので、世界銀行のデータによればアフリカ債務の総額は6,250億ドルだからIMFは228億ドル出し、中国は20%として計算すると1,250億ドル出していることになる。

1250億ドル(中国) - 228億ドル(IMF)=1022億ドル(=コミュニケ金額)

となることから、コミュニケの「1,000億ドル」という金額は、本稿で示したデータから算出されたものと推測される。

この金額で、ようやく中国の出資額とIMFの出資額が同等になる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パリのソルボンヌ大学でガザ抗議活動、警察が排除 キ

ビジネス

日銀が利上げなら「かなり深刻」な景気後退=元IMF

ビジネス

独CPI、4月は2.4%上昇に加速 コア・サービス

ワールド

米英外相、ハマスにガザ停戦案合意呼びかけ 「正しい
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ナワリヌイ暗殺は「プーチンの命令ではなかった」米…

  • 10

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中