最新記事

中国

G7「一帯一路」対抗策は中国に痛手か(その2)対アフリカ中国債務はわずか20%

2021年6月19日(土)14時16分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

図1に示したのは、世界銀行の2019年データに基づく「2019年末サハラ以南アフリカ諸国の債務」の円グラフだ。サハラ砂漠以北への投資はあまりないので、ここは計算の対象に入っていない。

endo20210619124601.jpg
図1:世界銀行の2019年データに基づき筆者が独自に作図

この分類は短期債務か長期債務かに注目した分類で、長期債務には「多国間、二国間、民間債権者、民間の非保証債務」の4種類がある。その内訳を右側に示した。

ジュビリーのデータは、中国の対アフリカ債務に関しては「最小値18%」と「最大値24%」の両方を計算して示し、最終的に中国の債務の割合は平均して「20%程度」と結論づけている。ただしジュビリーの場合は、全アフリカを網羅している。それでもサハラ以北のアフリカに関しては中国の投資もほとんどないので、微少なずれであるとジュビリー自身が説明している。

では先ず、「最小値18%」の方を、図2として示そう。

endo20210619124602.jpg
図2:ジュビリーのデータに基づく「対アフリカ債務における中国債務最小値の場合の債務分類」

図2の緑色「民間」に「中国以外」と書いてあるのは、中国の場合、基本的に「民間」はないということだとジュビリーは説明している。

では同様にジュビリーのデータに基づく「対アフリカ債務における中国債務最大値の場合の債務分類」はどのようになっているのかを図3に示す。

endo20210619124603.jpg
図3:ジュビリーのデータに基づく「対アフリカ債務における中国債務最大値の場合の債務分類」

図2と図3の元データに基づき、ジュビリーは中国の債務を約20%と計算している。

その一方で、アフリカ諸国が返済した利息の総額の17%が中国に充てられているとジュビリーは書いているので、「中国の利回りがほかの債務より低い」ことを示しているということが言える。

最後に同じくジュビリーが調べた、アフリカの返済リスクが最も高い15ヵ国に対する債権者の割合を見てみよう。アフリカには、投資しても戻ってこない可能性がある国がいくつかあり、その中の15ヵ国が最もリスクが高く、こういう国に投資したら返済してもらえないと考えた方がいい。

その15ヵ国は「ブルンジ、カーボベルデ、中央アフリカ共和国、チャド、ガンビア、ガーナ、モーリタニア、モザンビーク、サントメ・プリンシペ、南スーダン、スーダン、ジンバブエ、ジブチ、ザンビア、カメルーン」である。

図4は、「債務リスクが最も高いアフリカ15ヵ国の債権者」の分布を示したものだ。

endo20210619124604.jpg
図4:「債務リスクが最も高いアフリカ15ヵ国の債権者」の分布(ジュビリー統計から筆者がグラフ化)

ここから何が見えるのか?

さて、これらから何が見えるかと言うと、バイデンは「中国がアフリカの開発途上国などに膨大な資金を貸し付けて、高い利息を要求し、返済できないようにしておいて、開発途上国を債務漬けにして、中国が握りつぶそうとしている」と非難しているが、それはデータとは合致していないというが先ず見えてくる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

都区部コアCPI、1月は+2.5%に伸び拡大 食料

ビジネス

米個人投資家、「ディープシーク・ショック」時に押し

ビジネス

小売業販売12月は3.7%増、冬物好調と価格上昇で

ワールド

サムスン電子、第4四半期営業益は暫定値と一致 半導
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中