G7「一帯一路」対抗策は中国に痛手か(その2)対アフリカ中国債務はわずか20%
図1に示したのは、世界銀行の2019年データに基づく「2019年末サハラ以南アフリカ諸国の債務」の円グラフだ。サハラ砂漠以北への投資はあまりないので、ここは計算の対象に入っていない。
図1:世界銀行の2019年データに基づき筆者が独自に作図
この分類は短期債務か長期債務かに注目した分類で、長期債務には「多国間、二国間、民間債権者、民間の非保証債務」の4種類がある。その内訳を右側に示した。
ジュビリーのデータは、中国の対アフリカ債務に関しては「最小値18%」と「最大値24%」の両方を計算して示し、最終的に中国の債務の割合は平均して「20%程度」と結論づけている。ただしジュビリーの場合は、全アフリカを網羅している。それでもサハラ以北のアフリカに関しては中国の投資もほとんどないので、微少なずれであるとジュビリー自身が説明している。
では先ず、「最小値18%」の方を、図2として示そう。
図2:ジュビリーのデータに基づく「対アフリカ債務における中国債務最小値の場合の債務分類」
図2の緑色「民間」に「中国以外」と書いてあるのは、中国の場合、基本的に「民間」はないということだとジュビリーは説明している。
では同様にジュビリーのデータに基づく「対アフリカ債務における中国債務最大値の場合の債務分類」はどのようになっているのかを図3に示す。
図3:ジュビリーのデータに基づく「対アフリカ債務における中国債務最大値の場合の債務分類」
図2と図3の元データに基づき、ジュビリーは中国の債務を約20%と計算している。
その一方で、アフリカ諸国が返済した利息の総額の17%が中国に充てられているとジュビリーは書いているので、「中国の利回りがほかの債務より低い」ことを示しているということが言える。
最後に同じくジュビリーが調べた、アフリカの返済リスクが最も高い15ヵ国に対する債権者の割合を見てみよう。アフリカには、投資しても戻ってこない可能性がある国がいくつかあり、その中の15ヵ国が最もリスクが高く、こういう国に投資したら返済してもらえないと考えた方がいい。
その15ヵ国は「ブルンジ、カーボベルデ、中央アフリカ共和国、チャド、ガンビア、ガーナ、モーリタニア、モザンビーク、サントメ・プリンシペ、南スーダン、スーダン、ジンバブエ、ジブチ、ザンビア、カメルーン」である。
図4は、「債務リスクが最も高いアフリカ15ヵ国の債権者」の分布を示したものだ。
図4:「債務リスクが最も高いアフリカ15ヵ国の債権者」の分布(ジュビリー統計から筆者がグラフ化)
ここから何が見えるのか?
さて、これらから何が見えるかと言うと、バイデンは「中国がアフリカの開発途上国などに膨大な資金を貸し付けて、高い利息を要求し、返済できないようにしておいて、開発途上国を債務漬けにして、中国が握りつぶそうとしている」と非難しているが、それはデータとは合致していないというが先ず見えてくる。