最新記事

犯罪

自分の家に押し入った泥棒と親友になった女性 「人は変われる」

We Made Friends With Our Robber

2021年5月27日(木)19時17分
アン・リントン(イングランド中部タイズリー在住)
筆者アン・リントン(右)と娘のアンマリー

筆者(右)や娘のアンマリーはニール(手前)と個人的な絆を結ぶように COURTESY OF WEST MIDLANDS POLICE

<更生プログラムを通じて出会った窃盗犯のニール。「再チャレンジ」の大切さをこの友情に学んだ>

2019年3月、夫のテリーと親族を訪問した後、イングランド中部バーミンガム近郊にある自宅に戻ってきたときのことだ。普段は階段の上に置いてある袋が床に落ちているのに気付いた。なぜだろうと、夫に聞いたことを今でも覚えている。

テリーは私を見つめて言った。「泥棒に入られたんだ」

まさかと思ったが、居間のコーヒーテーブルの引き出しは空っぽで、孫のXboxや現金500ポンドが消えていた。寝室のベッドには引き出しの中身がぶちまけられていた。

すぐに警察に電話し、鑑識係員がやって来た。あちこちに指紋が残っていて、プロの仕業でないのは明らかだった。約1週間後、犯人は捕まった。

犯人が起訴された後、地区を管轄するウェストミッドランズ警察のジョン・ヘインズ巡査から「犯罪のない地域社会のための抑止プログラム(C3)」の説明を受けた。

私たちの間に友情が育った

C3は同警察が実施する更生プログラムだ。非暴力的な窃盗常習犯が特定の条件に同意すれば、プログラム期間中は懲役刑の執行が延期される。プログラム参加者は4カ月間、電子タグを装着し、特定の目標を達成しなければならない。事件関係者全員が集まる修復的司法会議への出席や職業訓練・労働、依存症回復支援、薬物検査などだ。

プログラムには被害者側の同意が必要だ。私は、犯人の「ニール」にはチャンスが与えられるべきだと考えた。

加害者が被害者に謝罪する場を設ける修復的司法会議の一環として、私は娘のアンマリーとバーミンガムの保護観察所を訪れ、ケースワーカーを務めるヘインズ巡査に付き添われたニールと対面した。私たちは観察所内の噂の的だったらしい。とても和やかな対面だったからだ。

プログラムをやり通そうとするニールの姿を目にするうちに、私たちの間に友情が育った。ヘインズは最新状況を欠かさず報告してくれ、ニールがどんなことでも努力する気でいると分かった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国国家主席、セルビアと「共通の未来」 東欧と関係

ビジネス

ウーバー第1四半期、予想外の純損失 株価9%安

ビジネス

NYタイムズ、1─3月売上高が予想上回る デジタル

ビジネス

米卸売在庫、3月は0.4%減 第1四半期成長の足か
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中