専門家でさえ初めて見るクジラの貴重映像...海の神秘に迫ったJ・キャメロン
They’re Just Like Us
Luis Lamar/National Geographic for Disney+
<大海原でクジラを追い掛け続けて3年。ジェームズ・キャメロン監督が神秘の生態を記録したドキュメンタリー>
歌唱大会に方言別のグループ、食べ物へのこだわり、女性長老の存在、アイデンティティーへの誇り、子育ての選択、そして死者への追悼――。
これは、人間界の話ではない。映画史上最大の興行収入を記録した『アバター』のジェームズ・キャメロン監督が、新たに謎に満ちた世界を見せようとしている。大きな脳と複雑な社会と、優れた意思伝達能力、それに高い認知力と感情を兼ね備えた動物、クジラの世界だ。
ナショナル・ジオグラフィックのドキュメンタリー『クジラと海洋生物たちの社会』は、キャメロンが北極と南極を含む世界の海を3年以上駆け巡り、誰もが知っている動物の、誰も見たことがない生態を見せる全4話のシリーズだ(ディズニープラスで配信中)。キャメロン映画の常連俳優シガニー・ウィーバーがナレーションを務める。
「長年クジラには大きな魅力を感じていた。私の専門分野ではないが、好奇心に任せてその世界に首を突っ込み、一種の物語として紹介する素晴らしいチャンスを得た」と、キャメロンは語る。
「海に引き寄せられた」
クジラたちの生態を至近距離で捉えることができたのは、水中写真家ブライアン・スケリーの技術のたまものだ。スケリーは40年以上にわたりクジラを撮影してきた経験があり、クジラに仲間として受け入れられることさえある。
キャメロンは、『タイタニック』や『アバター』といったアカデミー賞受賞作や、『エイリアン』や『ターミネーター』などのSF映画の監督として知られるが、ナショナル・ジオグラフィックの後援で海の探検もしてきた。
2012年には30分番組『ジェームズ・キャメロン:世界一深い海へ』で、世界最深とされるマリアナ海溝に世界で初めて単独到達したプロジェクトを紹介している。
そして今回はスケリーの助けを借りて、最先端技術と海洋探検という2つについての情熱を同時に追求することにした。カメラを向けたのは、クジラ目のシャチ、ザトウクジラ、ベルーガ、イッカク、マッコウクジラの5種だ。
キャメロンは、番組公開に先駆けて刊行されたスケリーの写真集『シークレット・オブ・ザ・ホエールズ』(原題)に序文を寄せている。それによると、キャメロンもスケリーも、海の中を探検して、そこで創作活動をすることに大きな魅力を感じてきたという。
「私たちはどちらも、海のない内陸の労働者階級の町に育った。それなのにどちらも、海に引き寄せられた」と、キャメロンは書いている。YMCAのプールでスキューバダイビングのライセンスを取得したのも2人の共通点だ。