習近平はなぜ米主催の気候変動サミットに出席したのか?
4月21日にオンラインで開催された気候変動サミット Florence Lo-REUTERS
4月22日、習近平は米国主催の気候変動サミットに参加したが、参加の決断は16日に下しており、19日迄にプーチンにも誘いをかけたと判断される。パリ協定「出戻り」の米国に主導権を渡すまいとした狙いが見える。
「歓迎する」という言葉が欲しかったケリー特使
4月13日のコラム<ケリー特使訪中――アメリカ対中強硬の本気度と中国の反応>https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20210413-00232579/に書いたように、ケリー特使(気候変動問題担当)が就任と同時に中国の解振華・中国気候変動事務局特使と連絡を取ったのは、「パリ協定」に戻ることを「歓迎する」という言葉が欲しかったからだ。
ケリー特使が4月14日に上海に行ったのは、同日、アーミテージ元国務副長官やドッド元上院議員等がバイデン大統領の要請で台湾を訪問したからで、その埋め合わせをするために「習近平のご機嫌」を損ねないためだった。
中国としては喜ぶべき話ではなく、中国共産党系の新聞はこぞって「歓迎しないわけではないが、大きな成果は得られないだろう」と冷淡だった。「パリ協定」を脱退しておきながら、「出戻り」のアメリカに「中国に参加しろ」などと言う資格はない、どの面ぶら下げてそんなことを言っているのか、というトーンが散見された。
したがって上海に着いたケリーは、15日、16日と上海のホテルの部屋から出ることなく、「王毅外相や楊潔チ中共中央政治局委員(兼中央外事工作委員会弁公室主任)と会談する可能性がある」と噂されながら、一向にその気配も見えなかったのである。
ところが16日、いざ帰国となったころに、突然、実は習近平が韓正国務院副総理(副首相)をケリーとリモート会談をさせていたことが判明した。
この時点で、習近平はバイデンが誘いかけてきた米国主催の気候変動サミットに出席する意向を固めていたものと推測される。
韓正の言葉と習近平の言葉が一致している
なぜなら、「ケリーと韓正のリモート対談における韓正の発言」と、「4月22日に気候変動サミットに参加した習近平の発言」が、非常に類似しているからだ。
したがって、韓正をケリーとのリモート対談に応じるよう指示を出した時点で、習近平の心は決まっていたものと判断することができるのである。
加えて、韓正は香港マカオ台湾などを管轄するとともに「自然資源部」(部は日本の「省」)や「生態環境部」などをも担当する任務を負っている。王毅や楊潔チよりも職位がずっと上だ。何と言ってもチャイナ・セブン(中共中央政治局常務委員7人)の一人なので、習近平の直接の指示があって動いたものと判断される。