最新記事

外交

習近平はなぜ米主催の気候変動サミットに出席したのか?

2021年4月24日(土)14時14分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
気候変動サミットに出席した習近平

4月21日にオンラインで開催された気候変動サミット Florence Lo-REUTERS

4月22日、習近平は米国主催の気候変動サミットに参加したが、参加の決断は16日に下しており、19日迄にプーチンにも誘いをかけたと判断される。パリ協定「出戻り」の米国に主導権を渡すまいとした狙いが見える。

「歓迎する」という言葉が欲しかったケリー特使

4月13日のコラム<ケリー特使訪中――アメリカ対中強硬の本気度と中国の反応>https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20210413-00232579/に書いたように、ケリー特使(気候変動問題担当)が就任と同時に中国の解振華・中国気候変動事務局特使と連絡を取ったのは、「パリ協定」に戻ることを「歓迎する」という言葉が欲しかったからだ。

ケリー特使が4月14日に上海に行ったのは、同日、アーミテージ元国務副長官やドッド元上院議員等がバイデン大統領の要請で台湾を訪問したからで、その埋め合わせをするために「習近平のご機嫌」を損ねないためだった。

中国としては喜ぶべき話ではなく、中国共産党系の新聞はこぞって「歓迎しないわけではないが、大きな成果は得られないだろう」と冷淡だった。「パリ協定」を脱退しておきながら、「出戻り」のアメリカに「中国に参加しろ」などと言う資格はない、どの面ぶら下げてそんなことを言っているのか、というトーンが散見された。

したがって上海に着いたケリーは、15日、16日と上海のホテルの部屋から出ることなく、「王毅外相や楊潔チ中共中央政治局委員(兼中央外事工作委員会弁公室主任)と会談する可能性がある」と噂されながら、一向にその気配も見えなかったのである。

ところが16日、いざ帰国となったころに、突然、実は習近平が韓正国務院副総理(副首相)をケリーとリモート会談をさせていたことが判明した。

この時点で、習近平はバイデンが誘いかけてきた米国主催の気候変動サミットに出席する意向を固めていたものと推測される。

韓正の言葉と習近平の言葉が一致している

なぜなら、「ケリーと韓正のリモート対談における韓正の発言」と、「4月22日に気候変動サミットに参加した習近平の発言」が、非常に類似しているからだ。

したがって、韓正をケリーとのリモート対談に応じるよう指示を出した時点で、習近平の心は決まっていたものと判断することができるのである。

加えて、韓正は香港マカオ台湾などを管轄するとともに「自然資源部」(部は日本の「省」)や「生態環境部」などをも担当する任務を負っている。王毅や楊潔チよりも職位がずっと上だ。何と言ってもチャイナ・セブン(中共中央政治局常務委員7人)の一人なので、習近平の直接の指示があって動いたものと判断される。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ミシガン大消費者信頼感11月確報値、71.8に上

ワールド

レバノン南部で医療従事者5人死亡、国連基地への攻撃

ビジネス

物価安定が最重要、必要ならマイナス金利復活も=スイ

ワールド

トランプ氏への量刑言い渡し延期、米NY地裁 不倫口
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    巨大隕石の衝突が「生命を進化」させた? 地球史初期…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中