最新記事

オーストラリア

洪水でクモ大量出現、世界で最も危険な殺人グモも:シドニー

2021年4月8日(木)17時45分
青葉やまと

「本当に心底ぞっとさせられた...... 」 Inside Edition-iStock

<洪水に見舞われたシドニー近郊で、数千匹のクモが住宅に押し寄せた。致死性の毒を持つ「殺人グモ」の出現も相次ぐ>

オーストラリア南東部のニューサウスウェールズ州で3月下旬、数十年に一度レベルの大規模な洪水が発生した。約1万8000人の住民が避難を余儀なくされた大災害は、浸水地域の広がりと共に、住民たちをさらに戸惑わせる異常事態を招く。通常は地面付近で活動しているクモが水に溺れまいとし、民家など高い場所を求めていっせいに這い上り始めたのだ。

ABCは民家の壁を覆うようにびっしりと発生した無数のクモの動画を掲載し、「まるで悪夢のようだ」と報じている。外壁にうごめく大小のクモは、この1棟の周囲だけでも数百匹ないしは一千匹を超えようかという密度だ。

住人の女性は発見当時を振り返り、「あんなものは今までに見たことがなく、本当に心底ぞっとさせられた」「辺りでクモを見かけることはたまにあったが、あれほどのことはなく、まさしく常軌を逸している」と語った。

女性が住む一帯は床下浸水に見舞われたが、幸いにも水位は床上に至らず、深夜1時を回ったころには水が引き始めたという。ほっとしたのも束の間、戸外の郵便受けを見ると小さな黒い集団がびっしりと覆い尽くしており、目を凝らすとそれらはすべてクモであることが判った。隣家のフェンスにも所狭しと大群がよじ登っており、「明らかに数千匹はいた」と女性は証言している。

オーストラリア爬虫類パークのティム・フォークナー園長は英インディペンデント紙に対し、クモたちは洪水で住処を追われ、乾いた土地を求めて大移動したのだろうと解説している。

通常は落ち葉の下や岩場、そして灌木の茂みなどを好むため、人目に触れる機会は比較的少ない。しかし、地面が水没したことにより、民家の床上など浸水していない場所によじ登るようになり、人々の生活に近いところに異常な数が密集する事態となった。

こうした身の毛のよだつ光景に留まらず、さらに危険な出来事が洪水の被災地を襲う。

殺人グモが活発に

洪水とクモ大量出現の組み合わせに住民たちは背筋を凍らせたが、これとは別に、専門家たちの間にも静かな危機感が広がっていた。ただのクモならさほど気にする必要はないが、シドニー近郊には「殺人グモ」とも呼ばれるシドニージョウゴグモが生息する。天気予報は気温の上昇を告げており、シドニージョウゴグモは高温と多湿の組み合わせを好むことから、行動の活発化は必至だ。

オーストラリア爬虫類パークで爬虫類およびクモ部門を統括するダン・ラムジー氏は、ニュース専門局の豪スカイニュースに出演し、危険性を警告している。氏はシドニージョウゴグモについて「ここオーストラリアに限らず、世界中でも最も危険なクモのひとつである可能性がある」と述べ、毒グモのなかでも屈指の毒性だと訴えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ギャップ、売上高見通し引き上げ ホリデー商戦好発

ビジネス

気候変動ファンド、1―9月は240億ドルの純流出=

ワールド

トランプ次期米大統領、ウォーシュ氏の財務長官起用を

ワールド

米商務長官指名のラトニック氏、中国との関係がやり玉
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中