復活祭前のキリスト教会で自爆テロ 自爆犯2人死亡、インドネシア
2020年11月には今回自爆テロが起きたマカッサル市のある南スラウェシ州に隣接する中部スラウェシ州の山間部でキリスト教徒4人が斬殺される事件も起きている。中部スラウェシ州では州都パルなどでイスラム系テロ組織「東部インドネシアのムジャヒディン(MIT)」によるテロ事件が相次ぎ、国家警察や軍によるMIT掃討を目的とした「ティノンバラ作戦」が継続されている。
「多様性の中の統一」が国是
今回の自爆テロもキリスト教徒、キリスト教施設をターゲットにしたテロ事件であることからジョコ・ウィドド大統領やMUIも今回の自爆テロを受けて「宗教に関係なくテロという卑劣な行為は非難されるべきである」と宗教の違いによる対立激化への強い懸念を表明した。
インドネシアは人口約2億7000万人のうち約88%がイスラム教徒と世界最大のイスラム教徒人口を擁しているが、憲法ではイスラム教以外にキリスト教、ヒンズー教、仏教なども認めており、いわゆる「イスラム教国」ではなく、「多様性の中の統一」や「寛容」を国是としている。
容疑者の身元不明で捜査は難航か
警察によるとこれまでのところ自爆テロ犯の身元は特定されていないが、2人は男女とみられている。
「カテドラル教会」近くに設置された監視カメラには白い乗用車が通り過ぎた直後に爆発が発生、道路が大きな白煙で覆われる状況が映し出されており、繰り返しその映像が地元テレビのニュースでは放映された。
これまでのところ自爆テロ犯の背景は分かっていないが、スラウェシ州を主な活動拠点とする「MIT」の関与を疑う見方もあったが、国家警察は28日夜、ISに忠誠を誓う「ジェマ・アンシャルット・ダウラ(JAD)」が関与しているとの見方を強めている。
マフード調整相は28日、全国の宗教関連施設や公共施設での警戒警備の強化を警察に指示、コロナ禍の中でのテロ事件にインドネシアでは緊張が高まっている。
[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など