最新記事

米中関係

米中「大荒れ」会談、注目されなかった王毅外相の重要発言

2021年3月23日(火)06時55分
シャノン・ティエジー
楊潔篪党政治局員、王毅外相

米側との初会談に向かう楊潔篪党政治局員(右)と王毅外相 FREDERIC J. BROWN-POOL-REUTERS

<冒頭から非難合戦となった米中外交会談。楊共産党政治局員の反論がメディアを賑わせたが、中国の要求を最も端的に表現していたのは王の発言だった。自国の存在を絶対視する中国に、果たしてアメリカは勝てるのか>

バイデン政権下で初の米中対話が3月18 日、アラスカ州アンカレジで開かれた。

アメリカ側はブリンケン国務長官とサリバン国家安全保障担当大統領補佐官、中国側は楊潔篪(ヤン・チエチー)共産党政治局員(党中央外事弁公室主任)と王毅(ワン・イー)外相が出席。会談は報道陣に公開される冒頭の発言から、外交的火花を散らす展開となった。

アメリカ側が挨拶をした後、楊と王は長々と反論を展開。そこで記者は退出する予定だったが、ブリンケンとサリバンはアメリカ側の反応を聞くまで残るよう促した。

その後、報道陣は部屋を出たが、今度は中国側が記者を呼び戻して最後の発言を要求した。

ブリンケンの冒頭発言は、ここ数年のアメリカの対中姿勢に沿ったものだった。「新疆ウイグル自治区、香港、台湾、アメリカへのサイバー攻撃、同盟国への経済的威圧など、中国の行動に強い懸念を抱いている」

内政問題に介入するなという中国の定番の反論にも先手を打った。「こうした行動はいずれも、世界の安定を支える『ルールに基づく秩序』を脅かすものだ。従って単なる内政問題ではなく、今日ここで問題提起する義務があると考える」

だが、中国側の反応は驚くべきものだった。ある記者によれば、楊は20分近くにわたり、アメリカに中国を批判する資格はないと主張し続けた。

楊は、アメリカがインド太平洋戦略で重視する「ルールに基づく秩序」の概念そのものを否定した。「中国と国際社会が支持しているのは、国連を中心とした国際システムと国際法に支えられた国際秩序であり、少数の国が提唱する『ルールに基づく』国際秩序なるものではない」

楊の反論ほど注目されなかったが、中国の要求を最も端的に表現していたのは王の発言だった。「アメリカ側に対し、中国の内政に干渉するという覇権主義的慣行を完全に放棄するよう求める。これは長年の問題であり、変えるべきものだ」

中国側の要求の柱は米中関係を「新常態( ニューノーマル)」に変えること。アメリカのこうした直接的批判はもう受け入れられないという意味だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アクティビスト、世界で動きが活発化 第1四半期は米

ワールド

フィンランドも対人地雷禁止条約離脱へ、ロシアの脅威

ワールド

米USTR、インドの貿易障壁に懸念 輸入要件「煩雑

ワールド

米議会上院の調査小委員会、メタの中国市場参入問題を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中