米中アラスカ会談──露わになった習近平の対米戦略
3.あなた方が訪問した国々が中国に脅威を感じているとおっしゃるが、果たして彼らが脅威を感じているのか、それともアメリカの主観的な憶測なのかわからない。少なくとも中国と意見交換する前に中国にレッテルを張るのは公正だとは思わない。
会談後、米中ともに「満足」と発表
会談終了後、米中はそれぞれ記者発表したが、双方とも「一致しない点はあるものの、率直に意見交換できたことは良かった」という趣旨のことを述べている。
中国側からあそこまでの明け透けな反論を受けながら、アメリカ側はなぜ「率直でよかった」と言ったのだろうか。
それは楊潔チ発言の4で書いたように、何と言ってもバイデンが習近平と電話会談をした時に「米中は衝突せず、対抗せず、互いに相手を尊重する」と誓っているからだろう。このことは2月12日付けのコラム<米中首脳電話会談を読み解く――なぜ「とっておきの」春節大晦日に?>に書いた通りだ。また2月8日のコラム<バイデン政権の本音か? 米中電話会談、「一つの中国」原則に関する米中発表の食い違い>に書いたように、ブリンケン自身、楊潔チとの電話会談では「一つの中国」原則を守ると誓っている。つまり、台湾問題には口出しをしないという意味だ。
二人とも中国側に言質(げんち)をとられているので、非公開の場所ではブリンケンは譲歩しただろうことが考えられる。
予めCCTVが崔天凱・駐米大使を取材
アメリカが香港関係者24人に対して制裁を発表したのはアメリカ時間の3月16日のことだ。
それを受けて3月17日に中国の中央テレビ局CCTVが崔天凱・駐米大使を取材している。普段は穏やかな崔天凱が、ここでは色を成してアメリカを非難し、楊潔チと王毅の反論を予感させる厳しい抗議と「中国をバカにするのではない」という趣旨の発言までしている。まるでアラスカ会談の序奏曲かと思わせる組み合わせだ。
ということは中国の外交トップ3人が共同して同じ勢いと方向性で動いているので、これは明らかに習近平の指示の下で全ては仕組まれていると考えるべきだろう。
「これまでの中国とは思うなよ」という、習近平の対米姿勢が如実に表れているということだ。