「救急車のサイレンを止めろ」、コロナで浮かび上がるナポリの犯罪組織「カモッラ」の悪行
ナポリの犯罪組織「カモッラ」による犠牲者を追悼するデモ隊 2009年 REUTERS/ Stefano Renna
<ナポリの犯罪組織「カモッラ」が、コロナ禍という社会の混乱の乗じて活動を活性化させ、イタリアで問題となっている......>
イタリアの犯罪組織「カモッラ」と救急車にまつわる報道が相次いでいる。カモッラは、1930年代前半イタリア南部のカンパニア州ナポリを拠点に組織された犯罪組織だ。
ナポリの検察官ジョバンニ・メリッロは、「カモッラは、麻薬などの違法な活動を行ったり、合法な活動を違法な条件で行う」組織と語る(ル・フィガロ紙)。
イタリアの犯罪集団というとマフィアが思い浮かぶが、「マフィア」はシチリア島を拠点とする組織を指す。他の地方の組織は、カンブリア州のヌドランゲタ、カンパニア州のカモッラという具合に組織も呼び名も別物だ。
救急車のサイレンが麻薬売買の妨げに
最近、「救急車のサイレンを止めろ」というカモッラによる脅しが増えている。1月30日には、スペイン地区で救急車の運転手が、追いかけてきたバイクに「サイレンを鳴らし続けるなら撃つぞ」と脅された(ユーロウィークリーニュース)。理由は、救急車のサイレンが警察のそれと紛らわしく、麻薬取引現場を混乱させるからというものだという。実際、ナポリでは過去3年間でカモッラによるとみられる救急車運転手への脅迫と攻撃が300件記録されている。
カモッラによる救急車組織
カモッラはゴミ回収処理業を牛耳っていることでも知られているが、さらに救急車組織も運営している。イタリアには、病人以外、退院者やハンディキャップを持つ人々を搬送する民間救急車システムがあるが、カモッラが経営するのはそうした民間組織だ。たとえば、ナポリで「クローチェ・サン・ピオ(聖ピオ十字)」を設立し、病院職員や警備員を脅迫して、「ナポリの主な病院に車を置ける唯一の民間救急車」となることに成功(エマージェンシーライブ)した。退院者のほんの数キロの移動に500ユーロという法外な値段を吹っ掛け、イタリアでは違法となる死亡者搬送を行うなど、ナポリの救急車業界を支配しているという。