イギリス上空に大火球、落下片から生命の構成元素を検出
イギリスが騒然となった大火球の落下片は、はやぶさ並みの貴重な試料だった...... Image: Natural History Museum
<英イングランド地方の夜空を特大の火の球が照らし、住民たちは騒然となった。この大火球は研究者たちをも驚かせることになる。地上に落下して隕石となったその破片に、生命の源となり得る物質が含まれていたのだ>
特大の流星(火球)が現地時間2月28日の夜10時前、イングランド南西部の静かな夜空に突然姿を現した。彗星のような黄緑色の尾を引きながら6秒ほどにわたり輝き、やがて地上方向へと姿を消している。
非常に明るい閃光を放っており、目撃範囲はイギリス国内に留まらない。宇宙関連情報を扱う『スペース・コム』は、アイルランドからオランダに至るまで広い範囲で観測されたと報じている。流星の観測情報を統括する国際流星機構には、900件を超える目撃情報が寄せられた。
Meteorite was seen in all cities of England, footage of the meteor falling over London, Bristolロンドン自然史博物館のスタッフが主催する「イギリス火球連合」ではまさに今回のようなケースに備え、観測用のカメラ30台以上を運用している。その甲斐あって、うち6台が今回の大火球を捉えることに成功した。さらに一般の市民からも、ドライブ・レコーダーや監視カメラなどに映り込んだ鮮明な光跡の映像が寄せられている。こうした映像を分析したところ、当時の速度は時速約4万8000キロに達していたことが明らかとなった。宇宙デブリやミサイルなどにしては速すぎるスピードだ。
チームは映像をもとに宇宙空間での元々の軌道を割り出し、主に火星と木星の付近を楕円状に周回していたことが判明した。これらの事実をもとに科学者たちは、閃光の正体は大気圏に落ちた小惑星だとの推論に至る。しかし、この時点では多くの人々がその希少さに気づいていなかった。
ドスンという衝撃で住民目覚める
小惑星は大気との摩擦で激しく燃焼したものの、燃え残ったいくつかの破片が地上に到達した。その多くは、イングランド地方のコッツウォルズに位置するチェルトナムの町の近郊に降り注いだものと見られる。同地はロンドンから電車で2時間少々の場所にあり、温泉保養地として知られるほか、競走馬の祭典でも有名な美しい田舎町だ。
突然の隕石の飛来に、のどかな町の住人たちは大いに驚いたことだろう。英テレグラフ紙は、隕石の発見の経緯を次のように報じている。「コッツウォルズに住むある一家がぐっすりと眠り込んでいたところ、ドスンという凄まじい音で目が覚めた。この時点では彼らはその原因となる物体が、地球上で生命が形成された経緯を解き明かす鍵になるかもしれないことなど知る由もなかった」。民家の敷地内の車道に激しく衝突し、それに気づいた一家が回収したようだ。
見つかったのは親指の先より一回り大きなサイズのゴツゴツとした石で、色はかなり黒く、まるで敷きたてのアスファルト道路のような色合いをしている。一家の行動のおかげで隕石は風雨にさらされることなく、ロンドン自然史博物館に運び込まれる。分析結果は驚くべきものだった。