「中国は反米キャンペーンに100万人を投じている」米軍司令官
China’s 1 Million-Strong Disinformation Machine
中国人民政治協商会議が行われた北京の人民大会堂で監視にあたる警備員(3月3日) Jason Lee-REUTERS
<「アメリカはいざという時守ってくれない」と周辺諸国に思い込ませ、アジアの盟主を目指していると、米インド太平洋軍司令官が警告>
中国は100万人規模の「デマ情報マシン」で、アメリカとそのパートナーである民主主義国の信頼関係を壊そうとしている──米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官は3月9日、米上院軍事委員会の公聴会で、そう警告した。
デービッドソンによれば、中国の狙いは、アメリカとアジアの同盟国を分断し、アジア太平洋地域で覇権を確立することだ。
「いざという時アメリカは頼りにならない」というメッセージを広めて、アメリカの影響力を低下させようとする情報戦略は、中国とロシアに共通すると、デービッドソンは語った。
「中国は既存メディアとソーシャルメディアの両方を駆使し、ざっと100万人を動員して、プロパガンダを繰り広げている」
その目的は「アメリカの利益を損ない、中国の利益にかなうような論調を広め、同盟国や友好国がアメリカの信頼性を疑うように仕向けて、同盟関係を弱体化させる」ことだと、デービッドソンはみる。
アジアが覇権争いの舞台に
中国が民主主義の統治システムを貶め、周辺国とアメリカの同盟関係を引き裂くようなプロパガンダを行うのは今に始まったことではない。
だがここ数年、新疆ウイグル自治区や香港、チベット自治区などにおける人権侵害や、南シナ海における領有権問題、台湾問題、さらには新型コロナウイルスのパンデミックで、中国が国際世論の批判を浴びる場面が増え、中国の政府系メディアは対抗して盛んにプロパガンダ報道を行うようになった。さらにはアメリカとの貿易摩擦やインドとの国境紛争絡みでも、大量の偽情報が流され、中国のフェイクニュース戦略に対する警戒感が高まっている。
特に新型コロナ関連では、中国共産党は精力的に偽情報を拡散している。中国の隠蔽体質がパンデミックを招いたという批判を交わし、欧米諸国の手ぬるい対応が感染を拡大させ、世界経済を混乱させたと責任転嫁するためだ。
デービッドソンによれば、中国の野望は、第2次大戦後一貫して東アジアの安全保障体制を支えてきたアメリカを追い出してアジアの盟主になること。そのためには、偽情報キャンペーンが欠かせない。
オバマ政権以降、米政府は次の覇権争いの舞台はアジアと見て、この地域に軍事的リソースを投入してきた。