バイデン次期政権の下「台湾は『中国に対する防波堤』になれる」(国防アナリスト)
Taiwan Could Be America's 'Maritime Israel,' Says Taipei Defense Guru
米台関係で重要なもう一つの存在は、世界有数の半導体メーカー台湾積体電路製造(TSMC)だ。同社の顧客は、ハイテク企業のアップルとクアルコムだけではない。米空軍のF-35戦闘機や中国のエレクトロニクス大手ファーウェイにも半導体を供給している。
TSMCの動向でアメリカと中国の主導権争いに一定の結果が出る、と蘇は予測する。結局、TSMCは、相互に依存する「戦略的三角形」を作るために、アメリカ、日本と協調するだろう。
同社がファーウェイにマイクロチップを供給し続けることはありえるが、台湾製品が主流になれば、国防総省が警戒する情報漏洩の「バックドア」となりかねない中国製の軍民両用技術を警戒する必要はなくなるだろう。
自衛力を高めることで、台湾は中国の無謀な軍事・外交政策を抑止し、インド太平洋地域の安全保障やアメリカの安全保障に貢献している、と蘇は語った。彼はかつて、台湾の国家安全保障会議および国防省の顧問も務めていた。
「アメリカは台湾が独立国家であると公然と認めることはできないが、台湾をひとつのものとして扱う。台湾はこれをてこに利用して、防衛能力を強化できる」と蘇は主張する。「それによってアメリカ、オーストラリア、日本の台湾に対する信頼が高まる。台湾は、海のイスラエルになることができる」
台湾防衛の意思が明確に
「台湾は今、国際世論を勝ち取らなくてはならない。イスラエルのように、台湾は尊敬と支援に値する存在になれるだろう。台湾は自由で民主的な社会であるがゆえに尊敬に値する。そして自らを守ることができる台湾は、支援に値する」
イスラエルのパレスチナとの紛争とは異なり、台湾の中国に対する抵抗は、大規模な人権侵害のそしりを受けるようなものではなく、台湾政府に対する支持に正統性を与えるはずだ、と蘇は主張した。「台湾は人権を守ることを望んでいる。他者の権利を侵害するつもりはない」
中国と台湾を隔てる台湾海峡は、最も狭いところで幅約130キロある。
「残念ながら、台湾は中国に近いが、幸いなことに台湾海峡は十分に広い。台湾への侵攻には、大規模な陸と海からの攻撃が必要になるだろう」と蘇は言う。
12日に機密解除されたインド太平洋戦略に関するホワイトハウスの内部文書は、中国による攻撃が発生した場合に台湾を守るというアメリカの意思をきわめて明確に示した。これによって、数十年にわたる難問だったアメリカ政府の中台関係に関する外交政策の「戦略的曖昧さ」が解決されたといっていい。