最新記事

事件

インドネシア、偽のコロナ陰性証明書発行のシンジケートが暗躍 空港・検疫関係者ら15人逮捕

2021年1月19日(火)20時30分
大塚智彦

情報提供から内偵、本格捜査へ

地元紙などの報道によると2020年12月ごろに「偽の陰性証明書」が出回っているとの情報が警察に寄せられ、内偵捜査が続いていた。昨年12月以降だけで28通の「偽の陰性証明書」が確認され、本格的な捜査を始めた結果、今回の一斉摘発となった。

警察ではまだ空港や検疫所など内部の関係者が事件に関与している可能性が高いとみて追加捜査を続けている。

逮捕された15人には検疫法違反と感染予防法違反の容疑がもたれており、起訴されて有罪となれば最高で禁固6年の刑が科される可能性があるという。

1月にはジャカルタ市内で別の「偽の陰性証明書」シンジケートも摘発されており、警察では背後には大きな「偽造組織」が複数存在している可能性もあるとみて、捜査を強化している。

ワクチン接種も始まる

インドネシアではコロナ感染が依然として猛威を振るっており、感染者は100万人に近づく勢いで、死者も2万6000人を超え、その勢いは衰える気配をみせていない。

1月13日にはジョコ・ウィドド大統領自らが中国製ワクチン接種の第1号となり、接種の模様をテレビで生中継。「ワクチンの安全性アピールとワクチン接種推進」を国民に訴えた。

その後閣僚や政財界、宗教界そして医療関係者へのワクチン接種が始まり、ワクチン接種によるコロナ対策もようやく本格化しようとしている。

その一方で今回のような「偽の陰性証明書」の摘発は、コロナ禍を商売にしようとする悪質な犯罪といえる。だが、いまだに多数派イスラム教徒の間には「コロナ感染は神の思し召し」「信仰心が篤ければ感染しない」と信じてマスク着用、手洗い励行、3密回避などの保健衛生上のルールを無視する人々が存在するのも事実。まさにインドネシアの混沌とした多様性の一面といえるかもしれない。

otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏とインドネシア保健相、保健分野でスターリン

ビジネス

アングル:米株が最高値更新、経験則に従えば一段高の

ワールド

イラン大統領と外相搭乗のヘリが山中で不時着、安否不

ワールド

カナダ、中国製EVの関税引き上げ検討=BBG
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中