特効薬なき対コロナ戦争、世界は中国の「覚悟」に学ぶべき
THERE WILL BE NO QUICK COVID FIX
最近注目されているモノクローナル抗体(中和抗体)の医薬品のような、より有望な薬や治療法が完成するのは、まだかなり先になる。完成したとしてもコストが高く、普及は見込めない可能性もある。
特効薬がないからこそ、政府の指導力、ガバナンス、そして社会の連帯が問われる。政治指導者は、コロナ禍で失われる人命に対して全責任を負わなければならない。
2020年1月、新型コロナが特定された後、中国湖北省の省都・武漢で最初の死者が報告されてから2〜3週間のうちに、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は武漢のロックダウン(都市封鎖)を実施し、さらに湖北省全域に範囲を拡大した。5800万人を超える住民に市外への移動を禁止し、外出を厳しく制限した。中国はマスク着用やソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保、自主隔離の義務化などのごく一般的な措置により、わずか2週間で新規感染者を半減させられることを示した。
中国が成功した要因を全体主義に求める見方が多いが、それは違う。決め手となるのは国の統治制度ではなく、経済への短期的な打撃や日常生活に多少の不便を招いても市民の安全を守るという指導者の覚悟だ。
その証拠に活気ある民主主義国家のニュージーランドやオーストラリアも、大胆で力強い政治的決断によって新規感染者をほぼゼロにした。ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相の強い覚悟は、総選挙での与党圧勝という形で報われた。
「戦時」だという意識を
新型コロナへの対応に追われた1年目で私たちが学んだのは、中途半端な措置は流行を悪化させるだけだということだ。国家規模、世界規模の危機には、国全体、世界全体での協力が必要だ。アメリカやイギリス、ブラジルの指導者はその点を怠ったため、状況をますます悪化させた。
人口の大半が免疫を獲得することで感染拡大を抑える「集団免疫」の達成という愚かな考え方を、いまだに追求している国もある。世界では毎年、人口の最大15%が4種類の一般的なコロナウイルスに感染しており、繰り返し感染する人も多い。新型コロナも例外でなければ、集団免疫に期待をかける国は国民を毎年、危険にさらすことになる。
中国政府は初期対応でいくつか重大な判断ミスも犯したが、一つ正しいこともした。それは新型コロナが空気中を漂う性質を持つ伝染性のあるウイルスであり、思い切った措置を迅速に取らなければ抑えられない、と世界に警告したことだ。
その警告を無視した国が、経済的にも人命に関しても最大の打撃を受けている。一方で感染拡大を抑制するために社会が団結した国は、経済活動の再開にこぎ着けている。