バイデン外交、総予測:中国、北朝鮮、欧州、ロシア、中東にはこう対処する
BIDEN’S FOREIGN POLICY CHALLENGES
イランについては、トランプは核合意から一方的に離脱して、経済制裁を再開させた。さらにイランの体制変更をにおわせる発言をしたこともあり、イラン政権の強硬派は態度を硬化させ、穏健派の政府高官も米政府への信頼が揺らいでいる。
イランが再び条件に従うと同意するなら、バイデンは核合意への復帰を模索するだろう。イランとしては、少なくとも制裁解除が条件となる。相互の信頼を回復し、双方の政治的な敵対勢力を刺激することなく、どちらが先にどのような行動を取るかを見極めるためには、熟練した忍耐強い外交官が必要だ。
さらに、サウジアラビアから距離を置きつつ中東外交を調整することも、繊細な問題だ。バイデンは、アメリカとサウジアラビアの関係の戦略的見直しを考えている。その1つとして、サウジアラビアが主導するイエメン内戦への軍事支援を停止するとともに、サウジアラビアの人権侵害を、少なくとも今後は容認しないのではないだろうか。
アメリカの貴重な時間を中東にこれ以上は奪われまいと、バイデンは決めている。エネルギー市場の変化、国民の疲弊、世界の覇権争いの再燃、国内の再生に集中せざるを得ない緊急性を考えれば、中東への関与を減らすという米政府の目標は、ここ数十年で実現可能性が最も高い。
ある顧問に言わせれば、中東は「アジア、ヨーロッパ、西半球に次いで、私たちの地域安全保障リストでは、3位からかなり離れた4位にいる」。
とはいえ、オバマも12年前に同じようなプランを胸に就任した──アメリカをあまりに多くの紛争に巻き込み、あまりに多くの代償を背負わせてきた争いの歴史から離れようと。しかし結局、オバマも紛争の歴史に引きずり込まれたのだった。
バイデンの大統領就任は、私たちの理想と利益と威信にとって、平和と繁栄の可能性にとって、トランプの2期目よりはるかに大きな前進をもたらすだろう。世界は混乱が続いている。バイデンはそれを乗り超えるために何をすべきか、何をすべきでないかを知っている。
もっとも、成し遂げられるかどうかは別問題だ。アメリカの力が及ぶ範囲は縮小し、米内外でバイデンの政敵が手ぐすねを引いている。アメリカの役割の低下が、世界の混乱に拍車を掛けることに変わりはない。
©2020 The Slate Group
<2020年11月24日号「バイデンのアメリカ」特集より>
11月24日号(11月17日発売)は「バイデンのアメリカ」特集。バイデン政権、就任100日の内政・外交・経済・コロナ対策を分析する