バイデン外交、総予測:中国、北朝鮮、欧州、ロシア、中東にはこう対処する
BIDEN’S FOREIGN POLICY CHALLENGES
もっともバイデンはトランプよりははるかにうまくこの問題に対処できる。中国と渡り合うには、まず同盟国と共同戦線を張る必要があると語っているからだ。トランプは中国に貿易戦争を仕掛け、自国の首を絞めたばかりか、返す刀でカナダの鉄鋼やドイツの自動車の輸入の規制を持ち出し同盟国まで敵に回した。
対中政策で関与と封じ込めのバランスをどう取るにせよ、同盟国との連携なしには効果は期待できない。幸い、多くの国が、特に韓国、日本、オーストラリアなどの同盟国が、利権拡大を狙う中国の愚かな振る舞いにうんざりしている。
中国に対抗する強力な防波堤を目指したTPP(環太平洋経済連携協定)からアメリカの離脱をトランプが強行したことは、大きな後退だった。
バイデンは、TPPに復帰することはおそらくできないだろう(民主党内でも進歩的な勢力を中心に反対が多い)。しかし、アメリカ抜きのTPP11が結ばれていることから、貿易や安全保障政策について、非公式の交渉はやりやすくなる。
一方で、トランプは大きな関心を示さなかったが、南シナ海の軍事化を目指す中国の野望を食い止めるために、米海空軍はこの地域でプレゼンスを維持してきた。トランプ政権がさらに4年続けば撤退したかもしれない駐韓米軍も、北朝鮮の冒険主義に対する抑止力として残っている。
トランプが北朝鮮の独裁者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との親密さをアピールしたことは、見返りが何もなかったことを考えても、在任中の最も不可解なことの1つだ。
金は長距離弾道ミサイルの製造とウラン濃縮を継続し、アメリカとその同盟国の間にくさびを打つ策略を練り続けた。米韓合同軍事演習の中止を要求し、日本海に向けて短距離弾道ミサイルを発射した。
さらには、米軍が韓国に駐留する法的根拠を消滅させるために、朝鮮戦争の「平和条約」の締結を迫ったが、こうした振る舞いに対してトランプは抵抗しなかった。
バイデンの外交顧問によると、バイデンは北朝鮮が先に非核化に動き出すまで、対話を再開しないだろう。そして、金の大言壮語に関係なく、同盟国の安全保障へのコミットメントを強化するだろう。
ついに中東から手を引く?
世界の長年の紛争地域である中東では、バイデンはおそらくアメリカの野心を定義し直して、一歩引く場面もある(トランプの迷走には政策のかけらもなかった)。
バラク・オバマと大統領顧問らがアフガニスタンでの戦い方を議論した際に、包括的な「国家建設」に反対し、アフガニスタン軍を訓練してテロリストを追跡させたほうがいいと主張したのは、ほぼバイデン1人だった(後にオバマが認めたように、バイデンが正しかった)。シリアやイラクでも、バイデンはこの時と同じような立場を取るだろう。