バイデン外交、総予測:中国、北朝鮮、欧州、ロシア、中東にはこう対処する
BIDEN’S FOREIGN POLICY CHALLENGES
「民主主義の原則」を軸に据え
欧州との関係修復でバイデンは大きな壁にぶつかるだろう。今ではそもそも「欧州」の定義が曖昧だ。
大陸の西半分は多かれ少なかれ今もアメリカと価値観を共有している。だがEU離脱後のイギリスはその影響力が及ぶ範囲も、影響力それ自体も縮小しているし、フランスは移民問題で内政の危機に直面している。ドイツは来年メルケルが引退した後、ネオナチの色合いを帯びた右派ナショナリズムに傾きかねない。
一方、トルコはもはや西側諸国の一員であるふりをしようともしないし、中欧と東欧の旧ソ連圏の国々の一部、特に冷戦直後には民主化に沸き返っていたポーランドとハンガリーは強権政治に逆戻りしている。
バイデンは「民主主義の原則」を同盟の結束軸にすべきだと主張し、世界が抱える諸問題を熟議するため「民主主義のためのグローバルサミット」の開催を呼び掛けている。だが肝心の原則が揺らいでいる今、そんな構想は夢物語とも映る。
欧州にとって幸運なのは、以前に比べロシアの脅威がさほど深刻ではなくなったことだ。ただし欧米の結束が乱れれば、ロシアは再びつけ上がるだろう。
いずれにせよロシアは主要な核保有国であり、バイデンは大統領になればすぐにでも新戦略兵器削減条約(新START)の延長交渉に乗り出すはずだ。この条約は来年2月に期限切れとなるが、最長5年延長できる。交渉を渋っていたトランプは大統領選の直前になって合意を急ぎ始めた。ただ現状では交渉は次期政権に持ち越されそうだ。
それ以外でもバイデンは米ロの利害に一致点があれば、それを追求するだろうが、利害が衝突する場合はあえて事を荒立てないか、必要とあれば封じ込め政策を取るとみられる。
アジアにはまた別の複雑な事情がある。中国の影響力拡大は言うまでもない。かつてはバイデンも含めアメリカの政治家の多くは国際社会に加われば中国もルールを守るようになるとみていた。だがその読みは外れ、今や中国は欧米主導の国際機関から自国主導の機関に移るよう他国を誘導するか恫喝し、自国中心の国際秩序を構築しようとしている。
北朝鮮との対話再開の条件
とはいえ米経済は中国なしには成り立たない。貿易、消費財、製造業を支えるサプライチェーンなど、全てが中国頼みだ。テロ、気候変動、核不拡散対策、それに北朝鮮の暴走を抑えるためにも、中国の力を借りる必要がある。
ビル・クリントン以降、歴代の米大統領は就任時には中国をおとなしくさせると誓っても、すぐに米中の相互依存がネックになることに気付いた。バイデンもそれと同じ、いや、これまで以上に厄介なジレンマに直面するだろう。
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