最新記事

バイデンのアメリカ

バイデン外交、総予測:中国、北朝鮮、欧州、ロシア、中東にはこう対処する

BIDEN’S FOREIGN POLICY CHALLENGES

2020年11月18日(水)07時05分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)

貿易戦争を乗り越えてバイデンは中国の習近平国家主席(右)とどう渡り合う(2013年12月) LINTAO ZHANG-POOL-REUTERS

<外交通で知られるが、大統領選では控えめな外交政策を掲げたバイデン。中国とはうまく渡り合えそうだが、欧州では壁が立ちふさがり......。新大統領の新外交で、世界はここまで変わる。本誌「バイデンのアメリカ」特集より>

米大統領選で勝利を確実にしたジョー・バイデン前副大統領は外交通で知られる。

大統領に就任したら、その手腕を生かして真っ先に取り組むのは、民主主義の理念とアメリカの利益を守るため同盟国との関係を修復することだろう。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)対策や気候変動など世界が直面する問題はアメリカだけでは解決できないと、バイデンは知っている。
20201124issue_cover200v2.jpg
問題は、同盟国がバイデンの申し出を受け入れるかどうかだ。ドナルド・トランプ大統領のけんか腰の孤立主義外交が4年間続いたせいで、同盟国の不信は根深く、そう簡単には解消できそうもない。

バイデンはアメリカを立て直すために大統領選に出馬した。内政では野心的な課題を掲げているが、それに比べて外交政策は控えめだ。

彼が上院外交委員長を務めていたのは20年近く前。その頃と比べればもちろん、副大統領時代と比べても世界は大きく変わった。昔取ったきねづかは通用しそうもないが、それでもバイデンはアメリカを再び世界のリーダーの地位に引き上げようとしているし、多くの国がそれを望んでいる。

バイデンの政権移行チームの国家安全保障担当と、メディアが占うバイデン政権の閣僚候補を見ると、全員が有能な米政界のインサイダーで、大半は上院議員時代か副大統領時代、またはその両方でバイデンと組んだ経験がある。

欧州の同盟国にとって、この状況は基本的には望ましい。フランスやドイツの指導者はバイデンの勝利が確実になると、安堵のため息を漏らした。

現状では、欧州はアメリカに頼らざるを得ない。トランプは就任4カ月後に初めて欧州を訪れ、NATO首脳会議に出席したが、集団防衛をうたった北大西洋条約第5条の尊重を誓おうとはしなかった。

アンゲラ・メルケル独首相はその後に行った演説で、「他国を全面的に頼れる時代」は「終わりを迎えたようだ」と語り、欧州は「自らの手で自らの運命を守らなければならない」と訴えた。

だが以後3年半の間にメルケルはじめEU各国の指導者は自前で十分な防衛力を持とうと努めただろうか。答えは否。軍備増強に十分な予算を投じる政治的意思がある国はEUには見当たらない。

アメリカに代わって軍事同盟の盟主になれる国もない。欧州は地域の集団防衛体制を固める「接着剤」としてアメリカを必要としているのだ。

【関連記事】バイデンは「親中」ではないが「親日」でもない──日本が覚悟するべきこと

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン

ビジネス

ECB総裁、欧州経済統合「緊急性高まる」 早期行動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中