主戦場ペンシルベニアを制するのはトランプか、バイデンか
Inside the Fight for Pennsylvania
政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の記者チャールズ・マケルウィーによると、有権者10万人未満の郡すべてで共和党の登録有権者が前回より増えている。州全体で見ると依然として民主党支持者が80万人ほど多いが、その差はこの4年間で16%ほど縮まったという。
郊外住宅地でトランプ陣営がよく持ち出すのは、人種差別に反対する抗議運動の「過激化」で、あたかもバイデンが暴動をあおり、警察を敵視しているかのような言説をばらまいている。黒人票も取り込みたいから、トランプ陣営は選挙CMに黒人の元NFL選手を起用し、「(副大統領時代の)バイデンは大勢の黒人男性を投獄した。トランプ大統領が彼らを解放した」と言わせている。
とにかく農村部と準郊外地で4年前のリードを広げ、郊外住宅地での失点を少しでも減らすこと。これが共和党の目標だ。
バイデンに独自の強み
バイデン陣営も負けてはいない。民主党の予備選に出馬して最初の演説会場には、ピッツバーグ市内の労働会館を選んだ。そして「皆さん、私がなぜここに来たか。今度の選挙でトランプに勝つためには、まずこの州で勝つ必要があるからだ」と訴えた。
バイデン陣営の同州責任者ブレンダン・マクフィリップスに言わせると、最近まで対面の選挙運動を控えたことや現地事務所を置かなかったことはマイナスにはなっていない。過去3カ月で陣営スタッフやボランティアは500万人近い有権者に電話をかけ、あるいは電子メールでメッセージを送った。
前回のクリントンは4万4000票差で負けたが、そのくらいはフィラデルフィア郊外で挽回できるともいう。郊外住宅地は反トランプ色が濃く、2018年の中間選挙では下院の3議席を奪還できた。農村部での巻き返しも図り、既に「250回以上」のイベントを開いた。
マクフィリップスは言う。「私たちは州内各地をくまなく訪れ、有権者全員と話をするよう全力を挙げている。誠実に対話し、投票を頼めば、多くの有権者を取り返せると考えている。(共和党が強い地域で勝つのは困難でも)、差は縮められる。それが決定的な違いを生むはずだ」
そしてバイデンには、クリントンともトランプとも違う強みがある。隣のデラウェア州選出の上院議員として36年のキャリアを積み、その間にペンシルベニアの労働組合や産業界の有力者とのつながりを深めたことだ。USW(全米鉄鋼労組)ペンシルベニア支部長のボビー・マコーリフは言う。「バイデンは私たちの問題を理解している。(4年前の)トランプは関税引き上げで鉄鋼業界を再生すると主張し、それに心を動かされた組合員もいたが、実際は今も多くの雇用が国外に流出し続けている」。だから同支部は今回、早々にバイデン支持を表明した。