最新記事

自動運転

米重機キャタピラー、コロナ対策で自動運転技術に賭ける

2020年10月14日(水)10時13分

米建設機械大手キャタピラーが自動運転分野に力を入れている。写真は機械を遠隔操作するキャタピラー・コンストラクション・デジタル・アンド・テクノロジーの担当者。スペインのマラガで撮影。写真はキャタピラーが提供(2020年 ロイター)

米建設機械大手キャタピラーが自動運転分野に力を入れている。作業員が乗り込んで操縦する必要がなく、鉱業企業などの顧客が新型コロナウイルスの大流行で感染防止策を迫られる中で、将来有望な市場と見込んでいるためだ。

ロイターが入手したキャタピラーの社内データによると、今年の採掘作業向け自動運転技術の売上高は前年比で2桁の伸びとなっている。半面、ブルドーザーや採掘用トラックなど他の建機はこの9カ月間に販売が落ち込んでおり、これは小松製作所<6301.T>や米ディアなど他の建機大手も同様だ。

キャタピラーの建設デジタル&テクノロジー部門のフレッド・リオ氏は、数マイル離れた場所から操縦可能な遠隔操作技術を来年1月に市場に投入すると明らかにした。


リオ氏によると、キャタピラーは宇宙関連機関と協力し、衛星を使った技術の開発も進めている。この技術を使えば、米国にいる作業員が世界中のどこの現場の建機とも交信可能だという。

しかしキャタピラーが自動運転分野重視の戦略を採用したのは、新型コロナ流行が始まってからではない。同社創業以来の経営不振を受けて、増収計画の一環として2017年にこうした戦略に着手した。

ただ、自動運転技術はまだ開発から日が浅く、キャタピラーの経営全体から見れば、極めて小さな部門にすぎない。同社は自動運転分野の売上高を公表していないが、いくら需要が高まっているといっても、近い将来、売上高全体の中で大きな比重を占めることはないだろう。キャタピラーの昨年の総売上高は約540億ドルだ。

研究・開発に数十億ドルを投じるキャタピラーにとって、自動運転技術はコスト面の負担も重い。しかし自動運転や遠隔操縦の技術が新型コロナ大流行後も長期にわたって需要を維持できるか不透明で、ハイテクがけん引する生産性向上により建機の新規販売が落ち込む恐れがある。

高まる熱狂

しかし自動運転技術は、これまでキャタピラー製建機の購入が少なかった顧客からの受注に貢献している。

資源大手リオ・ティントは昨年、オーストラリアのクーダイデリ鉄鉱山の作業向けに自動運転トラック、遠隔操縦方式のブラストドリルやローダーなどをキャタピラーから購入した。リオ・ティントはこの契約についてコメントを避けた。

鉱業界では既に自動運転トラックや遠隔方式のロードホールダンプなどでこうした技術が部分的に導入されていた。しかし新型コロナの感染拡大によるロックダウンで普及が加速した。

小松製作所で自動運転技術を担当するアンソニー・クック氏は、新型コロナ流行で顧客の多くが設備投資計画を前倒しし、自動運転の導入を進めていると述べた。新型コロナ危機は自動運転分野にとって打撃ではなく、「むしろ熱狂の度合いが高まった」という。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産とマツダ、中国向け新モデル公開 巻き返しへ

ビジネス

トヨタ、中国でテンセントと提携 若者にアピール

ワールド

焦点:「トランプ2.0」に備えよ、同盟各国が陰に陽

ビジネス

午後3時のドルは一時155.74円、34年ぶり高値
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中