最新記事

台湾有事

中国の台湾侵攻に備える米軍の「台湾駐屯」は賢明か 

China Will Start War If U.S. Troops Return to Taiwan Warns Global Times

2020年9月25日(金)15時44分
ブレンダン・コール

台湾の防空識別圏に入った中国軍のH-6爆撃機(写真は昨年、東シナ海上空で航空自衛隊が撮影した同型機) 防衛省/REUTERS

<このままでは敗北するというアメリカ側に対し、米軍が台湾に戻れば戦争だと中国>

米海兵隊のウォーカー・D・ミルズ大尉は、米陸軍大学発行の軍事誌「ミリタリーレビュー」最新版で、米軍は台湾に駐屯すべきだとする論文を発表。これに中国共産党機関紙系のタブロイド紙「環球時報」の編集者・胡錫進が、ツイッター上で強い反発を表明した。

ミルズは論文の中で、東アジアのパワーバランスがアメリカや台湾から中国寄りに傾きつつあると指摘。アメリカに「台湾の主権を守る決意があるならば」、台湾に地上軍を駐屯させることを検討すべきだと主張した。

「龍の抑止」と題した論文の中で、ミルズは現在のパワーバランスでは台湾への奇襲攻撃の「可能性がより高まっている」と警告。米指導部は「中国との意図的かつこれまで以上に世界規模に及ぶ紛争」に反対する国際的圧力に「勇敢に立ち向かう」べきだとの考えを述べた。

「人民解放軍(PLA)の攻撃に対して米軍が迅速に対応できないとしたら、残された道は2つ。PLAがあっという間に台湾に侵攻するのを受け入れるか、時間もコストも代償も伴う上に成功の保証もない作戦の遂行を余儀なくされるかだ」とミルズは書いている。

「正義の戦いを始める決意」

これに噛みついたのが、中国政府内でもより強硬派の見解を反映している環球時報の胡だ。彼はツイッターにミルズの論文のタイトルを投稿し、「アメリカと台湾でこのような考えを持っている人々に警告する」とコメントを添えた。

「米軍が台湾に戻れば、PLAは中国の領土を保全するための正義の戦いを始める決意だ。中国には反国家分裂法がある」と胡は続けた。2005年に制定された同法は、台湾が独立を宣言した場合、中国政府は台湾への武力行使も辞さないと予告するものだ。

胡のこのコメントと時を同じくして、中国は大規模な軍事演習を実施、中国軍の複数の戦闘機が停戦ラインである台湾海峡の中間線を越えて台湾の防空識別圏に入り、台湾が中国に警告を発する事態が発生していた。

台湾国防部はこの一件について、「一つの中国」政策の下で台湾を吸収したいと考える中国本土による「嫌がらせであり脅し」だと非難した。アメリカは1979年に制定された台湾関係法で、台湾の防衛に協力することがアメリカの義務であると定めている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロ外相「黒海合意は世界の食糧安保のため」、停戦楽観

ワールド

ロシア・ウクライナ、黒海・エネ停戦で合意 ロ「制裁

ビジネス

海外動向など「不確実性高い」、物価に上下のリスク=

ビジネス

企業向けサービス価格、2月は3%上昇 人件費などコ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 7
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 8
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 9
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 10
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中