寝室に踏み込んだ警官3人が黒人女性を撃ち殺しても、誰も殺人罪に問われない不正義
Officer Involved in Breonna Taylor Shooting Not Charged in Her Death
公正な裁きを求める声は一向にやまず、夏中抗議デモが続き、キャメロンは事態を沈静化させるため繰り返し説明を行う羽目になった。
「ケンタッキー州の市民、とりわけルイビルの人々への情報提供の重要性は認識している」と、キャンベルは地域ニュース専門のケービルテレビ局のインタビューで6月6日に語った。「公正かつ平等な法律の適用は、州司法長官の就任式で誓ったことであり、人々が私の事務所に求めていることでもあり、今後もそれを守っていく」
キャメロンは8月末、州司法長官事務所がFBIの弾道分析リポートを受け取ったことを認め、捜査を進める上で、その分析が「決定的」な意味を持ったと語った。ルイビル市警は9月21日、警官の休暇申請を全て却下し、大陪審の決定で起こり得る事態に備え、緊急出動体制を整えた。翌日、ルイビルのグレッグ・フィッシャー市長は23日の大陪審の発表後に「市内に混乱が広がる恐れがある」として、緊急事態宣言を発令した。
ウォーカーと近所の人々の証言、そしてそれを裏付けるいくつかの証拠から、テイラーのアパートに3人の警官が踏み込んだのは、3月13日午前0時40分頃とみられる。3人とも私服で、警告なしに入ってきたため、ウォーカーは不法侵入とみなしてマッティングリーの脚を撃ったと言っている。警官たちは応酬し、少なくとも8回テイラーを撃った。事件直後にウォーカーは第1級の暴行と警官1人に対する謀殺未遂の容疑で逮捕された。
「ブレオナ法」が成立
キャメロンは23日、捜査の結果、3人の警官はドアを破壊して踏み込む前に、「ノックをし、警告を発した」ことが分かったと述べた。現場近くにいた1人の証言により、警官たちの主張が裏付けられたというのだ。
ルイビル市警は、麻薬取締のためにノックなしの家宅捜査を認めている。テイラーのアパートを手入れしたのも、麻薬取引への関与を疑ったためだが、彼女のアパートからは違法薬物は一切見つかっていない。そもそもなぜテイラーのアパートが家宅捜査されたのか疑問視する向きも多い。テイラーの母親が人違いで娘を殺されたとして、ルイビル市を相手取って4月に起こした訴訟では、3人の警官がテイラーのアパートに到着する前に、既に別の場所で本当の容疑者が逮捕されていたことが明らかになった。
ルイビル市警のロバート・シュローダー署長は6月10の記者会見で、テイラーの自宅の捜査令状をとったジョシュア・ジェインズ刑事は、FBIの捜査結果が出るまで配置転換されていると述べた。
この発表の直後に、ルイビル市議会はノックなしの家宅捜査を禁止する「ブレオナ法案」を全会一致で可決。フィッシャー市長が翌日に署名し、この法律は成立した。
<参考記事>BLMの指導者「アメリカが我々の要求に応じないなら現在のシステムを焼き払う」の衝撃
<参考記事>秘密警察や記章もない車両が市民をさらう──ここはトランプの独裁国家
9月29日号(9月23日発売)は「コロナで世界に貢献した グッドカンパニー50」特集。利益も上げる世界と日本の「良き企業」50社[PLUS]進撃のBTS