棺桶、霊柩車でコロナ臨死体験 インドネシア、マスク着用ルール守らぬ者へ究極の罰則
徴収した罰金総額40億ルピアの意味
ジャカルタ特別州はインドネシア34州で最も感染者が多く、プロボリンゴ市のある東ジャワ州は感染死者が最も多い州となっていることから感染拡大が深刻な両州で「棺桶」と「霊柩車」の違いはあるものの、「臨死体験」を通して市民に「マスク着用」の徹底を呼びかける一環として実施された「思い付きの罰則」とみられている。
ジャカルタ特別州は5月から8月までに保健衛生上のルール違反で徴収した罰金が40億ルピア(約2900万円)に上ることを8月31日に発表している。
マスク非着用が初回違反の場合罰金は25万ルピア(約1800円)であることなどから、いかにジャカルタでは市民がルール違反を重ねているかの証左ともいえるとして、州政府や中央政府はとにかく現在「マスク着用」の徹底を呼びかけている。言い方を変えるともう「マスク着用」以外に打つ手がないという手詰まりの状況が生まれているともいえる状況だ。
ジャカルタ市内の主要なオフィスビル、商業ビルのエレベーターや掲示板に設置された動画スクリーンには最近「さあマスクを着用しよう」と呼びかけるジョコ・ウィドド大統領の静止画像が頻繁に登場している。国家元首自らがそうした「マスク着用」を呼びかけざるを得ないほど、インドネシアのコロナ感染は深刻化していることをこの画像は象徴している。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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