最新記事

感染症対策

棺桶、霊柩車でコロナ臨死体験 インドネシア、マスク着用ルール守らぬ者へ究極の罰則

2020年9月8日(火)21時35分
大塚智彦(PanAsiaNews)

ただこうした罰則は「微笑ましい」だけに効果が薄く、累犯者も多く、効果が一向に上がらないことに業を煮やした一部の風紀取締隊が思い付きで「棺桶臨死体験」を始めたという。

当初はマスコミの取材に「違反者が自ら選択したもので、(棺桶内の横たわりは)我々が強制したものではない。とはいえマスクを着用しないと死んで棺桶で葬られるという体験はルール厳守を再認識させる効果がある」と話していた。

ところが批判が殺到した結果、7日までに「ジャカルタ州政府の罰則は社会奉仕と罰金であり、今後はこの2つの罰則を厳格に適用していくこととしたい」と棺桶による罰則を撤回する方針を明らかにした。

もっとも「棺桶に入るという罰則はあくまで違反者が希望したことであり、我々は一切強制などしていない」と弁解することも忘れなかった。

棺桶に続き今後は霊柩車で臨死体験

こうしたジャカルタでの棺桶による罰則が全国的に話題となり非難を浴びる事態になっているのにも関わらず、東ジャワ州プロボリンゴ市内のマロン市場で7日に実施された「マスク着用抜き打ち検査」の結果、マスクを着用していなかった市場の売り子、店員と一般買い物客約50人が今度は霊柩車の中に数分間留まるという罰則を受けた。

地元マスコミなどによると約50人は普段コロナ感染で死亡した患者を医療施設から専用の墓地に運ぶ時に実際に使用している霊柩車の後部座席に数分間閉じ込められたという。
後部座席には感染死者用の棺桶があるが、棺桶に入ることは求められず、棺桶の脇に滞在することが求められ、霊柩車に乗る際には風紀取締隊からマスクを与えられ、それを車内では着用したという。

現地の風紀取締隊関係者は地元マスコミに対して「コロナ感染の恐ろしさを再認識してもらうことが目的である」として棺桶に横たわるわけでもなく、霊柩車での体験も強制ではない、と強調している。今回の検査は地元自治体関係者も同行した抜き打ち検査で、今後34カ所の市場でも同様の検査を実施するとしている。

プロボリンゴ市ではマスク非着用者への罰則は下水掃除や市場清掃で、売り手の場合は1週間の店舗閉鎖、買い物客などは身分証明書の3カ月没収も科している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU加盟国、トランプ次期米政権が新関税発動なら協調

ビジネス

経済対策、事業規模39兆円程度 補正予算の一般会計

ワールド

メキシコ大統領、強制送還移民受け入れの用意 トラン

ビジネス

Temuの中国PDD、第3四半期は売上高と利益が予
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中