最新記事

感染症対策

新型コロナ感染、重症化しなくても長く辛い後遺症 医療費膨張のリスクも

2020年8月12日(水)11時12分

胆嚢手術からの回復を待ちつつ、ニュージャージー州フォートリーの自宅で静養していた72歳のローラ・グロスさんは3月下旬、再び体調の悪化を感じた。写真は7月、自宅で休息するグロスさん(2020年 ロイター/Brendan McDermid)

胆嚢手術からの回復を待ちつつ、ニュージャージー州フォートリーの自宅で静養していた72歳のローラ・グロスさんは、3月下旬、再び体調の悪化を感じた。

喉と頭、目の痛みに加えて、筋肉や関節の疼きも続く。まるで霧のなかに閉じ込められているようだった。診断された病名はCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)。それから4カ月経っても、症状はなお残っている。

グロスさんはかかりつけの医師や、循環器科、呼吸器科、内分泌科、神経科、消化器科などの専門医の診察を受けた。しかし、「4月から頭痛が続いている。微熱も一向に治まらない」と彼女は言う。

各国で「ポストコロナ症候群」

COVID-19に関する研究が続く中、り患した患者に新たな合併症が次々に見つかっている。回復した患者が数カ月、場合によっては数年にも及ぶ長い期間、辛い後遺症に悩み続けるケースもある。

そういうエビデンスは相次いでおり、その治療にどれほどの費用が必要になるのか、長期的なコストの研究も医療関係者の間で広がってきた。

ニューヨーク市立大学(CUNY)パブリック・スクール・オブ・ヘルスのブルース・リー氏は、米国の人口の20%が新型コロナウイルスに感染した場合、退院から1年後までに生じる医療費が少なくとも500億ドル(約5兆3000億円)に達すると試算している。ワクチンがなく、人口の80%が感染する場合、そのコストは2040億ドルにまで膨れあがる、という。

ロイターが医師や医療エコノミスト10数人にインタビューしたところ、米国、英国、イタリアなど新型コロナによる大きな打撃を受けた国々が、こうした長期的な症状を「ポストコロナ症候群」とみなすことができるかどうか検討していることが分かった。

米国・イタリアの複数の病院では、後遺症患者専用の治療センターを創設し、フォローアップ治療の標準化を進めている。

COVID-19の長期的な影響に関する国家レベルの研究を先導しているのは、英国保健省と米疾病予防管理センター(CDC)である。医師らによる国際パネルは、回復した患者に対する中長期的な治療基準について8月中に世界保健機関(WHO)に勧告を行う予定だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 2人負

ビジネス

大手IT企業のデジタル決済サービス監督へ、米当局が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中