ヒューストンの中国総領事館はコロナ・ワクチンを盗もうとしていた?
Was China’s Houston Consulate Trying to Steal the Coronavirus Vaccine?
昨年7月には、ヒューストンの中国系実業家が石油産業向けに掘削機械を製造していたテキサス州の企業から鉄鋼関連の機密情報を盗んだとして有罪判決を受けた。この人物は帰化してアメリカ国籍を取得していたが、中国のために経済スパイを行なった容疑では無罪となった。
また、世界トップクラスの癌専門病院であるテキサス大学MDアンダーソン癌センターは昨年、米国立衛生研究所(NIH)が利益相反の可能性や一部の教職員が外国政府から非公式に収入を得ている問題に懸念を表明したことを受け、3人の研究者を追い出した。3人の国籍は公表されてはいないが、報道によれば中国政府や中国の機関の関与が伝えられている。
もっと最近では、ロシアのハッカーが新型コロナワクチンの研究成果を狙っているとイギリスとアメリカがそろって非難。この中には、前回の米大統領選で民主党全国委員会に対するサイバー攻撃に関与したハッカーたちも含まれるという。
「彼らの第1の使命は我が国の技術と研究(を盗むこと)だ」と語るのは、テキサスA&M大学の教授で、かつてCIAでスパイ対策の指揮を取っていたジェームズ・オルソンだ。「自分たちよりも優れた技術を手にしようという彼らの欲は際限がない。自力で手にするよりも盗む方がはるかに簡単だと考えているからだ」
人権は二の次のトランプ
近年、テキサス州では中国によるスパイ事件(もしくはその可能性のある事件)がいくつも発覚している。
6月には、米軍最大のパイロット養成施設のあるラフリン空軍基地近くの風力発電所建設をめぐり、トランプ政権は中国軍と関係のある企業を締め出さないことを決めたと伝えられた。この問題については、テキサス州選出のテッド・クルーズ上院議員(共和党)らがスティーブン・ムニューシン財務長官に対し、空軍の訓練ルートに悪影響を与える可能性について非公開でブリーフィングを行うよう求めている。
領事館の閉鎖に先立ち、ドナルド・トランプ大統領は中国に対する強硬な発言を繰り返していたが、それでも一部の民主党議員からは、主要な戦略的問題で中国に対するトランプ政権の対応が手ぬるくなっているとの声が上がっている。香港における民主派への弾圧に関与した中国当局者に対する制裁を、当初はやめさせようとしていたからだ。
「大統領は習主席にさんざんすり寄った挙げ句、中国に対してタフガイを演じようと決めたわけだ。特に新型コロナウイルスの感染拡大の責任を中国に負わせようとしている」と、クリス・バン・ホレン上院議員(民主党)は言う。
「中国について強気な態度や発言をしている一方で、少なくとも人権保護や民主化問題では習首席と中国政府の歓心を買おうとしている」とバン・ホレンは言う。
(翻訳:村井裕美)
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