最新記事

東南アジア

インドネシア、イスラム過激派壊滅作戦を延長 長期化で民間人を誤認殺害との報道も

2020年7月5日(日)19時20分
大塚智彦(PanAsiaNews)

誤認殺害について記者会見で語る州警察長官 KOMPASTV / YouTUbe

<一般市民に危険をもたらすテロ組織を掃討するはずの国家警察が、市民を殺害していた──>

インドネシア国家警察は、スラウェシ島中スラウェシ州ポソを中心とした地域で継続中のイスラム過激派「東部インドネシアのムジャヒディン(MIT)」に対する壊滅作戦の期間をさらに3カ月延長し、重要手配中のメンバー14人の拘束に全力を挙げる方針を明らかにした。

インドネシア政府は現在感染拡大が一向に収まらない新型コロナウイルスの防止策に全力を挙げているが、MITをはじめとするインドネシアの複数のテロ組織がコロナ禍による社会の混乱を利用してテロを起こす懸念があるとして、警戒監視を全国で強化している。

MITは「ジェマ・アンシャルット・ダウラ(JAD)」と並んで現在インドネシアで最も危険なテロ組織とされ、国家警察の対テロ特殊部隊「デンスス88」と陸軍の戦略予備軍などが共同でポソ周辺のMITメンバーの摘発を続けている。

治安当局は2020年1月1日からMIT殲滅を目指した「ティノンバラ作戦」を発動。3月31日の第1期終了時に再延長し6月29日まで継続してきたが、最重要容疑者として手配中のMITメンバー14人がいまだに拘束されていないことなどから、7月1日から9月30日までの3カ月間、3度目の延長で所期の目的達成を目指すことになった。

創設メンバーの指導者殺害後も活動継続するMIT

MITは東南アジアのテロ組織「ジェマ・イスラミア(JI)」の創設者でもあるアブ・バカル・バシール師が2008年に創設した「唯一神擁護共同体(JAT)」から分派したサントソ容疑者(複数の殺人、誘拐容疑で氏名手配)によって2011年に新たに組織された。

その後2016年7月にサントソ容疑者が治安部隊との銃撃戦で射殺され、メンバーも20人以下になるなど組織の弱体化が伝えられた。

しかし新たな指導者としてアリ・カロラ容疑者(ポソ銀行襲撃事件などで指名手配)を中心に組織の再興を図っていると伝えられ、メンバーには同じイスラム教徒のウイグル人テロリストも合流しているとの情報もあり、30人前後が中核メンバーとして活動中とされている。

MITは3月27日ポソ近郊で救援物資輸送中の警察部隊を襲撃。4月8日には治安部隊のスパイ嫌疑があるという農民の斬首などに関与、同月15日にはポソ市内の銀行で警備中の警察官を襲撃、同月19日にはポソ近郊での農民殺害と、スラウェシ州でのテロ活動を活発化させている。


【話題の記事】
・新型コロナのワクチンはいつになったらできる?
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・新型コロナ、血液型によって重症化に差が出るとの研究報告 リスクの高い血液型は?
・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独クリスマス市襲撃、容疑者に反イスラム言動 難民対

ワールド

シリア暫定政府、国防相に元反体制派司令官を任命 外

ワールド

アングル:肥満症治療薬、他の疾患治療の契機に 米で

ビジネス

日鉄、ホワイトハウスが「不当な影響力」と米当局に書
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    トランプ、ウクライナ支援継続で「戦況逆転」の可能…
  • 5
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 6
    「私が主役!」と、他人を見下すような態度に批判殺…
  • 7
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 8
    「オメガ3脂肪酸」と「葉物野菜」で腸内環境を改善..…
  • 9
    「スニーカー時代」にハイヒールを擁護するのは「オ…
  • 10
    「たったの10分間でもいい」ランニングをムリなく継続…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 5
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 8
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 9
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 10
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命を…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 8
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 9
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 10
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中