最新記事

免疫

BCGワクチン、ポリオワクチンの効果を検証する動きが広がる

2020年6月15日(月)14時00分
松岡由希子

長年使われてきたポリオワクチンも、コロナウイルスに効果がある ......? REUTERS/Mohamed al-Sayaghi

<新型コロナウイルス感染症を終息させるため効果的なワクチンが開発されるまでの一時的な手段として注目されているのが、BCGワクチンやポリオワクチンなど、他の感染症予防で長年用いられてきたワクチンの効果だ ......>

世界各地で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症を終息させるためには、ワクチンの開発が不可欠だ。米製薬大手ファイザーが新型コロナウイルス感染症予防ワクチン「BNT162」の第1/2相試験にドイツ米国で着手したほか、2020年6月9日時点で9種類のワクチン候補について臨床評価が開始され、126種類で非臨床評価がすすめられている。

免疫応答を活性化させる働きがあるのでは

効果的なワクチンが開発されるまでの一時的な手段として注目されているのが、BCGワクチンやポリオワクチンなど、他の感染症予防で長年用いられてきたワクチンだ。

ワクチンは、特定の病原体の構造を免疫系に記憶させ、病原体が体内に侵入した際、その記憶によってこれを排除するために接種されるものだが、年月を経て、他の病原体にも対抗する「オフターゲット効果」をもたらし、他の感染症を寄せ付けないよう免疫応答を活性化させる働きがあるのではないかと考えられている。

つまり、これらのワクチン接種によって新型コロナウイルスへの免疫を獲得するわけではないが、重症化リスクを軽減したり、新型コロナウイルスを克服するための自然免疫を備えられるかもしれないというわけだ。

BCGワクチンは世界各国で検証中

マックス・プランク研究所では、3月21日、遺伝子組み換えBCGワクチン「VPM1002」の第3相試験で「VPM1002が新型コロナウイルスに対抗する免疫系を強化するのか」についての検証に着手した。

(参考記事:ドイツで、BCGワクチンの新型コロナウイルスへの効果を検証する臨床試験はじまる

豪小児医療研究所「マードック・チルドレンズ・リサーチ・インスティチュート(MCRI)」でも、医療従事者を対象に、新型コロナウイルス感染症に対するBCGワクチンの効果を検証する臨床試験を実施。オランダでは、ラドバウド大学医療センターとユトレヒト大学病院の共同研究チームが、60歳以上の1600名を対象に、BCGワクチンが新型コロナウイルス感染症の感染リスクや重症化リスクを軽減するのか、検証をすすめている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ビットコインが10万ドルに迫る、トランプ次期米政権

ビジネス

シタデル創業者グリフィン氏、少数株売却に前向き I

ワールド

米SEC委員長が来年1月に退任へ 功績評価の一方で

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦争を警告 米が緊張激化と非難
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中