BCGワクチン、ポリオワクチンの効果を検証する動きが広がる
米国でも、テキサスA&M大学のジェフリー・シリーロ教授が、4月29日、医療従事者数百名を対象に、同様の目的で第4相試験(製造販売後臨床試験)に着手した。評価の結果は6ヶ月以内に明らかになるという。シリーロ教授は、「BCGワクチンは、免疫系を強化する作用、すなわち『訓練免疫』をもたらす。新型コロナウイルス感染症予防ワクチンが開発されるまでの間、これが大きな違いをもたらす可能性がある」と期待を寄せている。
BCGワクチンの接種と新型コロナウイルスの感染拡大との負の相関関係については、たびたび取り沙汰されてきた。世界保健機関(WHO)は、4月20日、「BCGワクチンが新型コロナウイルスの感染を予防することを示す証拠はない」との見解を明らかにしている。
1955年から1982年まですべての新生児にBCGワクチンの接種を義務づけたものの、それ以降は結核の有病率が高い地域からの移民のみに接種対象を限定しているイスラエルでは「定期接種を受けた世代とそうでない世代で、新型コロナウイルス感染症の発症率に差は認められなかった」との研究結果が示されている。
アメリカでは経口生ポリオワクチンの効果を検証する計画
BCGワクチン以外の感染症予防ワクチンでも、新型コロナウイルスへの効果を検証する動きがみられる。アメリカ食品医薬品局(FDA)傘下の生物学的製剤評価研究センター(CBER)らの研究チームは、6月12日、学術雑誌「サイエンス」で「弱毒生ワクチン、とりわけ経口生ポリオワクチンによって自然免疫を刺激すれば、新型コロナウイルス感染症を一時的に予防できるのではないか」との仮説を示し、今後、1万1000名を対象に臨床試験を実施する計画を明らかにしている。
これらの取り組みに対して懸念の声もあがっている。米カリフォルニア大学アーバイン校のマイケル・ブッフマイヤー教授は、米紙ワシントン・ポストの記事で、「これらのワクチンが、意図とは真逆の効果をもたらすかもしれない。免疫反応が過剰になり、最悪の場合、致命的な状態を引き起こしかねない『サイトカイン・ストーム』を招くおそれがある」と警告している。