最新記事

世界経済

新型コロナで増える女性の失業 米でもシングルマザーが犠牲の筆頭

2020年5月16日(土)13時23分

米サウスカロライナ州チャールストンでバーテンダーとして働いていたシャナ・スウェインさん2人の娘。解雇される以前は、毎晩、客に料理を提供し、「マンハッタン」「コスモポリタン」といったカクテルを作っていた。サウスカロライナ州チャールストンで撮影(2020年 ロイター/Dianne Swain提供)

米サウスカロライナ州チャールストンでバーテンダーとして働いていたシャナ・スウェインさん。解雇される以前は、毎晩、客に料理を提供し、「マンハッタン」「コスモポリタン」といったカクテルを作っていた。

だが今、40歳のスウェインさんは5歳、8歳の2人の娘とともに夕食をとり、不動産取引資格の勉強をしている。新型コロナウイルスがもたらした危機で生計が脅かされたことを受けて、こうした資格を取れば、家族のためにもっと長期的な安定が得られるのではないか、と期待している。

20年間バーテンダーとして働いたスウェインさんは、「こんな状況は二度と耐えられない」と話す。

パンデミック(世界的な大流行)に伴う失業の嵐のなかで、早くから大きな打撃を受けたのが、米国の女性たちだ。コロナウイルスのまん延防止に向けた事業活動停止のなかで、女性の就労が多かった雇用が失われたせいである。米労働省が8日に発表したデータによれば、3月に失われた雇用の60%、さらに4月に失われた2050万人の雇用の55%は女性である。

成人女性の失業率も、4月には15.5%と急上昇した。男性の失業率13%、労働者全体の14.7%を上回っている。

家計の唯一の、あるいは主たる稼ぎ手となっている女性は特に速いペースで職を失いつつあり、失業率は4月の時点で15.9%に上昇している。これに対し、配偶者のいる女性の失業率は13%だ。

4月の失業者増大の中心となったのは、娯楽・サービス産業770万人、医療・教育産業250万人である。どちらも消費者と直接対面する産業であり、エコノミストらによれば、非白人女性を含め、女性が多数を占めている。

こうした仕事は全般的に賃金が低い。労働省のデータによれば、スーパーのレジ係やバーテンダーの平均時給は11.40ドル(約1220円)、ウェイトレスは11ドルである。そのため、危機に備えた貯蓄がほとんどない可能性が高い。国内の一部地域では、賃金水準はさらに低い。

女性政策研究所のC・ニコル・メイソン所長は、「こうしたセクターで雇用されている女性たちはただでさえ綱渡りの状態にあり、多くはシングルマザーか、家計における主要な稼ぎ手になっている」と語る。

スウェインさんによれば、彼女に「シャナ・バナナ」というあだ名を付けた常連客の多くは、店が休業した後も携帯電話にメッセージをくれるという。彼女はスーパーに行って食材をまとめ買いし、日持ちするよう野菜を湯がいて冷凍する。

「備えあれば憂いなしということがようやく分かった」と彼女は言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は反発、米株高が支援 一時400円高

ワールド

伊、オープンAIに罰金 チャットGPTがデータ保護

ビジネス

ホンダと日産、経営統合視野に協議入り 三菱自も出席

ワールド

ウクライナのNATO加盟、同盟国説得が必須=ゼレン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    トランプ、ウクライナ支援継続で「戦況逆転」の可能…
  • 5
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 6
    「私が主役!」と、他人を見下すような態度に批判殺…
  • 7
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 8
    「オメガ3脂肪酸」と「葉物野菜」で腸内環境を改善..…
  • 9
    「スニーカー時代」にハイヒールを擁護するのは「オ…
  • 10
    「たったの10分間でもいい」ランニングをムリなく継続…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 5
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 8
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 9
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 8
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 9
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 10
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中