新型コロナで増える女性の失業 米でもシングルマザーが犠牲の筆頭
前進が帳消しに
エコノミストらによれば、近年、労働人口への女性の参入が増大し、主力となる25ー54歳の労働参加率の上昇をけん引してきたが、今回の危機によって、そうした前進が帳消しになってしまう恐れがあるという。
昨年12月、2010年以来初めて、一時的にではあるが労働人口の過半数を女性が占めることになり、労働市場の需給タイト化と記録的な景気拡大の賜物として歓迎された。国勢調査によれば、女性が主たる稼ぎ手である家計(大半はシングルマザー)の貧困率は、2018年に史上最低の26.8%まで低下した。
メイソン氏は、「だが今、女性が急速に職を失いつつあるという、明確で劇的な変化が生じている」と言う。
4月、25ー54歳の女性における労働参加率は73.6%に低下し、男性の労働参加率に比べ、大きな落ち込みを示した。ジェンダー間の参加率格差は、2月に最小を更新した後、再び拡大した。
カンザスシティ地区連銀の上級エコノミスト、ディデム・テュゼマン氏によれば、3月中の雇用減少によって特に大きな影響を受けたグループは大卒以上の学歴を持たない女性であり、パンデミックによる喪失分を取り戻すにも困難が伴う可能性があるという。同氏は2008ー09年の金融危機による影響を受けた労働者についても研究している。
テュゼマン氏の研究結果によれば、前回の景気後退の際には、大卒以上の学歴を持たない女性では労働参加率の落ち込みが激しかったという。
各州がソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)の規制を緩和し、事業活動が再開されるにつれて、今後数カ月間で職を取り戻す人も出てくるだろう。だが多くの企業は、スタッフの数を抑えつつ段階的に事業を再開する見込みであり、雇用の不確実性は残る。
「仕事が見つからなければ、彼女たちは労働人口から離脱してしまうかもしれない」とテュゼマン氏は言う。
パウエル連邦準備理事会(FRB)議長は4月の連邦公開市場委員会(FOMC)後、11年に及ぶ経済成長により、かつてはなかなかはい上がれない不利な立場にある労働者にも新たな道が開けた、と語った。「いま、そうした人たちが皆、脅かされているのを見るのは、率直に言って、ひどく辛い」と同議長は言葉を続けた。
ティナ・ワトソンさんは、5年を超える失業を経て、昨年秋、サウスカロライナ州ホリーヒルのマクドナルドで調理師としての職を見つけた。2月、彼女はウェンディーズに転職した。マクドナルドでは週3ー4日勤務だったのが、こちらではフルタイム、時給も7.25ドルから8ドルにアップした。
シングルマザーのワトソンさんは、しばらくのあいだ、月々の支払いにも苦労せず、自分自身と11歳の息子のためにわずかばかりの貯金もできた。だが、そうした安定は短期間で終った。
3月末、ウェンディーズはソーシャル・ディスタンシング規制を守るために店内での飲食を中止し、ワトソンさんの勤務スケジュールは週2日に減らされた。収入減少により請求書の支払いも滞り、学校が休校になったせいで、息子のための安心できる学童施設もなかなか見つからない。
「これまでも常に苦労してきたが、ますます悪くなっていくように感じている」とワトソンさんは言う。かつては金銭的に援助してくれた母親も、昨年亡くなってしまった。「私のわずかな給料では何の足しにもならない」
Jonnelle Marte(翻訳:エァクレーレン)
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